ふきとり検査 とは?
食品の安全を担保するため、食品を扱う環境の衛生状態をモニタリングすることは極めて重要です。
この記事では、微生物による環境汚染、つまり生物的衛生状態の評価に推奨されている「ふきとり検査」について、その目的や方法についてご説明します。
1. ふきとり検査 とは?〜その目的
食中毒の原因となる微生物は、一般的には食品を扱う人によって食品工場や厨房に持ち込まれます。
しかし、それ以外にも2つのパターンで食品を扱う環境に存在しています。
一つは、空中に浮遊して存在する空中浮遊菌。
そして食品、器具・機材、施設内設備、また食品取扱者の手指など、様々なところの表面に付着する表面付着菌です。
ふきとり検査は、この表面付着菌を検出するための検査です。食品に関わる環境の生物学的衛生状態を検証する検査の一つになります。
なお、都道府県政令指定都市が定める衛生管理運営基準には、ふきとり検査について「定期的に製品検査やふきとり検査等を実施し、施設の衛生状態を確認すること」と記載されています。
2. ふきとり検査 でわかること
環境にある微生物は、私たちの目に見えません。
しかし ふきとり検査 を行うと、検査対象に存在している一般生菌や大腸菌、ブドウ球菌、ノロウイルスなどを検出し、微生物の存在を可視化することが可能になります。
また ふきとり検査 を行うことにより、食中毒の原因となる微生物が検査対象に付着しているのかというだけでなく、付着しているのであれば、どの程度付着して環境を汚染しているかもわかります。
したがって、ふきとり検査は食品を扱う環境に存在する微生物のモニタリングとして活用できます。
また汚染度合いが強いエリアを検出することで、問題となる場所を特定し、解決策につなげることも可能となります。
AHCのふきとり検査は細菌・ウィルスに対応できます。
3. ふきとり検査 の方法:検体の採取法
検体を採取するためには、綿棒で検査対象を拭きとる方法、また培地を対象物に直に接触するスタンプ法があります。
・綿棒で検査対象を拭きとる方法(標準法)
対象物の表面の一定面積を滅菌綿棒でふきとり、綿棒の先端を試薬で希釈をした上で検査を行います。
写真①まな板の表面を拭き取る様子
写真②包丁の表面を拭き取る様子
写真③食品を扱う人の手のひらを拭き取る様子
写真④工場内のドアノブを拭き取る様子
この方法は、様々な検査対象物の表面から効率よく微生物を回収できる利点があります。
・直接スタンプ法
検査対象物の表面に、培地を直接接触させ、対象物表面の微生物を培地表面に移行させます。
写真⑤手のひらを直接スタンプする様子
その後培養し、培地に発育した菌のコロニー(集落)の数を計測します。
この方法は、操作が簡単で、手軽にサンプルを集めることができる一方、曲面からは採取が難しいという欠点もあります。
4. ふきとり検査 の方法:検体の検査法
直接スタンプ法で採取した検体は、培養して菌のコロニー数をカウントします。
綿棒で拭き取った検体は、培養法あるいはATP法を用いて検査することが可能です。
・培養法
培養法では、検査対象の表面を拭き取った綿棒から抽出した試料液を培地に塗り広げ、培養します。
1〜2日の培養後、観測される大腸菌、ブドウ球菌などを含む一般生菌のコロニー数で検査対象の汚染状況を判断することができます。
環境に生存している微生物を特定できるのは、培養法しかありせん。
・ATP法
ATP法は、生物の体内に存在するアデノシン三リン酸を検出する方法で、迅速に結果が出ることが利点です。
ただしATP法では微生物そのものを検出しているわけではありません。結果はあくまでも目安として利用するのが賢明です。
環境を洗浄した後の評価など、限定された用途に用いられることが一般的です。
5. まとめ
ふきとり検査の概要を説明しました。
食品を扱う工場や厨房の管理者の方は、ご自身の管理する環境の衛生状態を定期的に把握する必要があります。
安全な環境を安定して提供し続けるために、ぜひ、AHCのふきとり検査を活用いただけましたら幸いです。
参考
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