アフラトキシン カビ毒は、食品を扱う事業者が警戒すべき天然毒素です。天然物質の中で最も強い発がん性が知られています。
国際がん研究機関(IARC)も、ヒトへの発がん性ありと評価しています。つまり、輸入原料を使う事業者には、知識と検査体制の整備が欠かせません。
このガイドでは、基礎構造から規制値、検査方法、HACCP対応までを体系的に整理します。実務で判断に迷ったときの参照点として活用してください。
なお、基本特徴や見た目による判断についてはアフラトキシンの基礎知識で別途解説しています。
アフラトキシン カビ毒の基本構造と4型の違い
アフラトキシン カビ毒は、アスペルギルス属カビの二次代謝産物です。産生菌種は主に*Aspergillus flavus*と*Aspergillus parasiticus*の2種となります。
繁殖条件は温度25〜35℃・水分活性0.80以上です。つまり、この条件下で毒素産生リスクが急上昇します。
主要な型はB1・B2・G1・G2の4種類です。この分類は紫外線下の蛍光色に由来します。B型は青色(Blue)、G型は緑色(Green)の蛍光を示します。
毒性はB1が最も強く、次いでG1・B2・G2の順です。そのため、規制値は4種の総和で定量します。これが国際標準となっています。
化学的には非常に安定した物質です。加熱しても分解されにくく、調理温度では除去できません。さらに、無色・無味・無臭のため感覚では判別不可能です。したがって、原料段階での機器分析が唯一の確実な対策となります。
健康影響と国際的な発がん性評価
健康影響は急性毒性と慢性毒性の2面で整理します。まず急性毒性では、高濃度の一度摂取で肝壊死を引き起こします。実際に、2004年ケニアで汚染トウモロコシによる集団中毒事例が報告されました。
慢性毒性は長期的な低濃度暴露で発現します。主な標的臓器は肝臓です。特にB型肝炎ウイルス保有者では肝細胞がんリスクが相乗的に上昇します。
IARCはアフラトキシンB1をGroup 1(発がん性あり)に分類しました。これはアスベストやベンゼンと同じ最高危険度区分です。
国際的にはJECFA(FAO/WHO合同専門家会議)が定期評価しています。第83回会合(2016年)では、ALARA原則での管理が推奨されました。
つまり、実現可能な限り低く保つ方針です。閾値を設定しない考え方が採用されています。
日本と国際規格の規制値を整理
日本の規制値は2011年に大きく変わりました。改正通知は食安発0331第5号です。それまではB1単独規制でしたが、総アフラトキシン(4種の総和)10μg/kg へ移行しました。これを超えた食品は食品衛生法違反となります。
コーデックス委員会(FAO/WHO)の国際基準は、ピーナッツ(そのまま食用)15μg/kgです。加工用原料は20μg/kgとなっています。
一方、EUはさらに厳格です。ピーナッツ4μg/kg、その他ナッツ類4μg/kgで世界最厳レベルとなっています。したがって、輸出事業者は仕向地ごとに基準を確認する必要があります。
乳製品では別途、代謝物M1の規制があります。日本は乳0.5μg/kg、EUは0.05μg/kgです。この10倍差は国際輸出時に問題となります。実際に、飼料由来M1残留で出荷停止になる事例も報告されています。
汚染リスクが高い食品と原料管理
厚生労働科学研究の国内流通食品調査では、特定食品群で一貫した検出が見られます。
落花生とピーナッツ加工品は検出率5%前後です。最大濃度は120μg/kgを超える事例もあります。穀類ではハト麦とそば粉の検出率が高めです。ハト麦で1〜3%の陽性が報告されています。
香辛料ではナツメグ、赤唐辛子、カレー粉から検出があります。ナッツ類全般ではピスタチオとアーモンドが注目品目です。
ピスタチオは産地差が大きい食品です。イラン産・トルコ産で高汚染の傾向があります。さらに加工食品にも低濃度汚染が確認されています。具体的にはチョコレート、ピーナッツバター、ココア粉末などです。
原料管理の基本は受入検査の体系化です。柱は3つあります。輸入ロットごとのスクリーニング実施、高リスク原料の重点監視、保管倉庫の温湿度管理です。
保管環境は温度15℃以下・相対湿度65%以下が推奨されます。この条件下では産生カビの増殖が抑制されるためです。
実務で選べる検査方法と判定の流れ
検査方法は目的に応じて2段階で選択します。まず一次スクリーニングです。ELISA法(酵素免疫測定)が主流となっています。
ELISA法は数時間で判定可能です。多検体処理に向いており、定期モニタリングや受入検査で広く使われています。ただし定量精度は中程度です。そのため、陽性品は確定検査へ進めます。
確定検査はHPLCまたはLC-MS/MSによる機器分析です。厚生労働省通知「総アフラトキシンの試験法」(食安監発0816第7号)に準拠します。
B1〜G2を個別定量でき、検出限界は0.1μg/kg以下です。公的提出用や裁判資料として通用します。
結果の判定は単純です。総アフラトキシンが10μg/kg以下なら適合、超過なら不適合となります。
ただしEU輸出では4μg/kg基準を適用します。国内流通と輸出で判定基準が異なる点に注意が必要です。
AHCでは両規制に対応した検査プランを提供しています。詳細はAHCのアフラトキシン定量検査で確認できます。
事業者が取るべき総合対策とHACCP組込
HACCP制度化により、アフラトキシン対策は化学的ハザードとして危害要因分析に組み込みます。
具体的には、原料受入工程でCCPまたはOPRPとして設定します。モニタリングは受入検査結果の確認、管理基準は10μg/kg以下です。
予防管理の柱は3段階です。第一は調達管理となります。サプライヤーの原産地・保管状況を把握します。そして汚染リスクの低い産地から優先調達します。
第二は受入検査です。ロット単位のスクリーニング実施が基本となります。第三は自社保管管理で、温湿度記録と定期的な品質確認が求められます。
公的機関の詳細指針は、厚生労働省「カビ毒(アフラトキシン)を含有する食品の取扱いについて」で確認できます。この通知が管理の出発点です。
株式会社AHCはISO/IEC 17025:2017認定の食品検査ラボです。スクリーニングから確定検査、輸出対応まで一貫してサポートします。
HACCP計画の化学的ハザード設定や原料管理体制でお悩みの場合、受託試験サービス一覧をご覧ください。またはお問い合わせフォームからご相談いただけます。
外部参考リンク
– 厚生労働省 カビ毒(アフラトキシン)を含有する食品の取扱いについて — 日本における規制の一次情報
– IARC Monographs Volume 100F(アフラトキシン) — 発がん性評価の国際公式文書
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