ピロリ菌検査 のすすめ
ピロリ菌 は、環境水(井戸水など)やすでに感染した人たちから私たちの胃のなかに感染し、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、そして胃がんなど、様々な病気を引き起こしています。しかし、胃がんになる前に ピロリ菌 の存在を診断し、必要に応じて除菌をすることで、将来の発がんのリスクを減らすことができます。そこで今回は、 ピロリ菌 の検査に焦点を当てたいと思います。
1. ピロリ菌の検査について
ピロリ菌の検査は、ヒトを対象とした検査と環境から採取したサンプルに対する検査がありますので、その両方についてご説明いたします。
1) 感染者を確認する検査
ピロリ菌に感染しているかを確認するために、複数の検査があります。主にピロリ菌そのものを検出する方法、ピロリ菌に対する抗体を測定する方法、ピロリ菌がもつ酵素であるウレアーゼの活性を測定する方法の3つに分類できます。なおピロリ菌の検査は、胃カメラで胃潰瘍や慢性胃炎を認めると、保険適応となりますが、胃カメラをしないで検査をすると、保険適応とならず、自費診療となります。
ピロリ菌の存在を検出する検査
- 便中ピロリ菌抗原検査:便のなかに排出されるピロリ菌の一部(抗原)を認識する抗体を用いて検査をします。
- 病理組織学的検査:胃カメラで採取した胃の表面(粘膜)の一部を顕微鏡で観察して診断します。
- 培養法:胃カメラで採取した胃の表面(粘膜)から菌の培養を行って検査します。結果が出るまで3日以上を要するのが欠点ですが、菌そのものを確認することができます。
ピロリ菌 に対する抗体を測定する方法
- 血中・尿中ピロリ菌IgG抗体検査:ピロリ菌に対する抗体を測定することで、過去に感染したことがわかります。ただし除菌後も陽性になりえます。
ピロリ菌 がもつ酵素であるウレアーゼの活性を測定する方法
- 迅速ウレアーゼ試験:胃カメラで採取した胃の表面(粘膜)の一部を尿素と反応させてみる試験。ウレアーゼが存在すると、アンモニアが生じ、試薬が変色します。
- 尿素呼気検査:13C-尿素を含む試薬を内服。ウレアーゼによる化学反応によって、吐く息のなかに13C-二酸化炭素が増える性質を利用しています。
2) ピロリ菌 が環境内に生存することを確認する検査
ヒトを取り巻く環境中ピロリ菌の検出には、難培養微生物培養法とPCR法があります。
容器を入手し、指定された方法で検体を採取した上で容器に入れて郵送します。後日結果が返送されます。
2. 環境中 ピロリ菌検査 の特性について
全ての検査には、限界があります。本当は陰性なのに陽性となること(偽陽性)、逆に本当は陽性なのに陰性となること(偽陰性)があります。例えばピロリ菌の場合、PCR法ではピロリ菌ではない菌由来のcDNAを検出することによる偽陽性の可能性があります。 また、ピロリ菌の数が少ないか、うまく検体を採取できていなければ、偽陰性となることもあります。検査の結果を見ると、一喜一憂したくなりますが、全ての検査には限界があることは知っておきましょう。
3. 環境水の検査が結果への対応
井戸水など環境水を検査し、ピロリ菌が陽性であった場合、その水はピロリ菌に汚染されている可能性があります。その水を飲んでいる人は、ピロリ菌への感染リスクが高まります。医療機関を受診し、医師の指示に従い、ご自身や家族の検査を進める方が良いでしょう。
またその環境水は、必ず煮沸して飲むようにしましょう。環境水そのものを、塩素を用いて消毒する方法やピロリ菌を通さない濾過膜を利用する方法ありますが、設備にコストが必要となります。一方、環境水を検査して一度陰性になったとしても、定期的な検査を続けることが望ましいと考えられます。
それは、検査の特性から再び陽性になることもあること、また自然界の環境は絶えず変化するからです。本当は陽性なのに、たまたま陰性となってしまうことがありますし、今回は陰性でもいつの間にかピロリ菌に汚染される可能性があるということです。油断なく、1年に1回、定期的な検査を繰り返すことが望ましいでしょう。
4. ピロリ菌検査 のまとめ
ピロリ菌の検査について、整理してみました。感染者を確認するための検査と環境水の検査は大変有用です。賢く使い分けて安全な水を飲み、健康を維持しましょう。特に環境水は災害の時などに頼る必要があるかもしれません。普段から安全に飲めるよう備えてきたいですね。
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本記事は医師が執筆しています。
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