レトルト食品の検査は、常温保存を可能にする特殊な加熱殺菌プロセスが前提です。しかし「F値とは何か」「恒温試験はどうやるのか」と悩む製造者は多いでしょう。この記事では、レトルト食品の検査に必要な項目と殺菌条件の基準を解説します。
レトルト食品の規格と定義
レトルト食品は食品衛生法で「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」として規定されています。気密性のある容器包装に食品を充填し、加圧加熱殺菌したものを指します。
具体的にはカレー、シチュー、パスタソース、炊き込みご飯などが該当します。ハンバーグや魚の煮付けなどもレトルト化されています。つまり常温で長期保存できる加工食品の多くが対象です。
成分規格は2項目あります。まず一般生菌数は無菌状態でなければなりません。具体的には恒温試験で菌の発育がないことが条件です。加えて中心部の温度が120℃で4分間、またはこれと同等以上の効力を持つ方法で殺菌する必要があります。
これは「ボツリヌス菌A型・B型の芽胞を完全に死滅させる」ために設定されています。ボツリヌス菌は嫌気条件下で増殖します。密封容器の中はまさに嫌気条件です。そのため厳格な殺菌が求められるのです。
加えてpH4.6以下または水分活性0.94以下の食品は、上記の殺菌条件が緩和されます。酸性条件や低水分活性ではボツリヌス菌が増殖できないためです。
F値と殺菌条件の考え方
レトルト食品の殺菌ではF値という指標が重要です。F値は121.1℃を基準として計算される殺菌効力の値です。
具体的にはF値=4.0以上が一般的な基準です。これは120℃で4分間の殺菌と同等です。ただし食品の種類や初期菌数によっては、より高いF値が必要となります。たとえば肉や魚を含む製品ではF値5〜8程度を設定する事業者もいます。
F値の計算には食品の熱伝導特性が関わります。つまり容器の形状や内容物の粘度で実際の殺菌効果が変わります。そのため新商品の開発時は必ず熱浸透試験を実施します。具体的には製品中心部の温度を継続的に測定し、F値を算出します。
加えて釜内の温度分布も重要です。製造ラインでは釜の位置によって殺菌効力が異なる可能性があります。そのため最も加熱されにくい位置で基準値を満たす必要があります。
食品検査・分析では熱浸透試験の結果解析もサポート可能です。
恒温試験と製品検査
レトルト食品の品質確認には恒温試験が不可欠です。製造後の製品を35℃で14日間保管します。加えて55℃で7日間の試験も併用されます。
35℃試験は中温性の腐敗菌・食中毒菌を対象とします。一方、55℃試験は耐熱性の好熱性菌を検出します。両方の試験で容器の膨張や内容物の変敗がないことを確認します。
さらに恒温試験後に細菌検査を実施します。一般生菌数が増加していないか、異常な菌が検出されないかを確認します。これで殺菌条件の妥当性が検証されます。
缶詰や瓶詰も同様の恒温試験が適用されます。ただし容器材質により試験条件が若干異なります。たとえば缶詰ではクリンチング(二重巻締)の品質も評価項目です。
恒温試験で異常が検出された場合、製造条件の見直しが必須です。具体的には殺菌温度、時間、釜内温度分布などを再評価します。
ボツリヌス菌リスクと品質管理
レトルト食品で最も恐れるべきはボツリヌス菌です。嫌気条件下で増殖し、神経毒であるボツリヌストキシンを産生します。
ボツリヌス菌の芽胞は耐熱性が高い特徴があります。100℃の加熱でも死滅しません。そのため120℃以上の高温高圧殺菌が不可欠です。一方、産生された毒素自体は80℃で30分の加熱で不活化されます。
製品の異常を示すサインには2つあります。まず容器のふくらみ(パッキング)です。次に開封時の異臭です。これらが見られた場合は絶対に食べてはいけません。
品質管理では製造工程全体の管理が重要です。原料の初期菌数管理、殺菌条件の厳守、冷却工程の衛生管理などが挙げられます。加えて拭き取り検査による環境モニタリングも有効です。
厚生労働省でもレトルト食品の規格遵守が求められています。
AHCのレトルト食品向け検査サービス
AHCはISO/IEC 17025認定試験所です。レトルト食品の検査に幅広く対応しています。恒温試験から細菌検査まで一貫して提供可能です。
具体的には35℃14日間および55℃7日間の恒温試験、一般生菌数、好熱性菌、嫌気性菌の検査に対応します。加えて熱浸透試験の結果解析もサポートします。
新商品の開発から定期検査まで、レトルト食品の品質管理をトータルで支援します。全国どこからでも検体を郵送できます。
レトルト食品の規格検査や殺菌条件の評価でお悩みの方はお問い合わせください。
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