室内環境における空中微生物汚染度の評価

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室内環境における空中微生物汚染度の評価法

製造室内の浮遊菌環境

浮遊菌、落下菌

食品製造分野を中心に,そこで実施されている室内環境における空中微生物検査,汚染度の評価法について紹介します。環境中の微生物は食中毒や品質劣化リスクの要因となるため、食品等の製造施設では,製造環境の清浄度を高めることでリスクが低減を図ります。清浄度の確認は、適切な環境下での製造されているかどうかの指標であり、環境中の微生物汚染度をもって清浄度を評価することができます。

空中微生物検査

空中に存在する微生物の検査法は,大きく分けると落下菌測定法、空中浮遊菌測定法の 2 つです。落下菌測定法は,寒天平板培地を測定場所に設置し、一定の時間開放することで落下した微生物を捕集計測する方法です。空中浮遊菌測定法は、エアサンプラーを用いて一定量の空気を吸引し、空気中に存在する微生物を捕集測定します。

空中微生物検査法の特徴

落下細菌法

操作は簡易で作業する方の負担が軽く、定期的な試験を行うためのコストパフォーマンスにも優れています。捕集時間は浮遊菌測定法に対しては長目となり、また定量的なデータを取得することはできません。

浮遊菌測定法

測定装置が必要になります。操作は落下細菌測定法に比べると複雑になります。慣れてくれば捕集時間にかかる時間は落下細菌測定法よりも早い場合があります。吸引量を設定することが可能で、空中に浮遊する細菌の定量的なデータを得ることができます。

落下菌測定法の実際

落下菌測定を行ってみましょう。寒天培地の種類(検査したい微生物の項目によって変わります)、設置場所、開放時間を決める必要があります。厚生労働省通知 「弁当及びそうざいの衛生規範について」に規定されている方法を紹介します。これは食品製造施設の衛生確保を目的とした汚染度評価のための測定法です。基本的にAHCに落下細菌検査をお任せくだされば、面倒なことは一切ありません。また非常に低コストで実施することができます。

 「弁当及びそうざいの衛生規範」における落下菌測定法

細菌

標準寒天平板培地を入れたシャーレ2~3枚を床面から80cmの高さの調理台面等に置き、ふたをとり5分間水平に静置した後、ふたをしめて、35.0±1℃の温度で48±3時間培養し、細菌集落数を算定し、その平均値を求めて、寒天培地1枚あたりの5分間の落下細菌数とする。測定は作業中に行います。

真菌

PDA寒天平板培地(クロラムフェニコール又はテトラサイクリン50mgないし100mg/Lの量を添加する)を入れたシャーレ2~3枚を床面から80cmの高さの調理台面等の測定場所に置き、ふたをとり、20分間水平に静置した後、再び静かにふたをしめて、これを23±2.0℃の温度で7日間培養して培地上に発生する真菌集落数を算定し、その平均値を求めて、寒天培地1枚当たりの20分間の落下真菌数とする。測定は作業中に行います。

空中浮遊菌測定法

空中浮遊菌測定法は,まず空気を吸引し空中に浮遊する微生物を捕集します。捕集法には違いがあります。衝突法やインピンジャー捕集法、ろ過法です。当社が推奨する衝突法では、寒天培地に吸引した空気を衝突させることにより微生物を捕集します。アンダーセンサンプラー法やスリットサンプラー法等があります。インピンジャー法は液体を入れた容器内に吸引した空気を暴露させ、液体内に微生物を捕集する方法です。ろ過法はフィルターを介して空気を吸引することにより,フィルターに微生物を捕集する方法です。空中浮遊菌を捕集後に生菌数を測定します。

空中微生物汚染度の評価法

食品製造施設における評価基準の一例として,各種食品の「衛生規範」について下表に示します。「衛生規範 」においては,微生物汚染度の高い区域から低い区域への微生物汚染を防止するために,製造区域を汚染作業区域と非汚染作業区域に分け,また明確に区画することが規定されています。さらに,非汚染作業区域については準清潔作業区域と清潔作業区域に区画することとされています。そして,それぞれの作業区域ごとに空中浮遊微生物汚染度の基準値が規定されています。

食 品

汚染作業区域

非汚染作業区域

準清潔区域

清 潔 区 域

落下細菌

落下細菌

落下細菌

落下真菌

弁当及びそうざい

100 以下

50 以下

30 以下

10 以下

漬物(pH4.5以上の製品)

100 以下

50 以下

10 以下

洋生菓子

100 以下

50 以下

30 以下

10 以下

セントラルキッチン/カミサリー・システム

100 以下

50 以下

30 以下

10 以下

生めん類

100 以下

50 以下

30 以下

10 以下

注:落下細菌・真菌測定法は「弁当及びそうざいの衛生規範」の落下菌測定法による。

 

おわりに

空中浮遊微生物測定法にはそれぞれ長所,短所があります。食品製造施設だけでなく医薬品製造施設などで評価する目的や要求される空気清浄度に応じて,適切な空中微生物測定法を用いることになります。株式会社AHCでは、落下細菌測定浮遊菌測定を受託いたします。この機会にご検討をいただければと存じます。

 

参考資料

 

  1. 5つのポイントで解説!微生物汚染度評価の重要性
  2. 厚生省通知:「弁当及びそうざいの衛生規範について」(環食第 161 号,昭和 54 年 6月 29 日)
  3. 厚生省通知:「漬物の衛生規範について」(環食第 214 号,昭和 56 年 9 月 24 日)
  4. 厚生省通知: 「洋生菓子の衛生規範について 」(環食第 54 号,昭和 58 年 3 月 31 日)
  5. 厚生省通知: 「セントラルキッチン/カミサリー・システムの衛生規範について 」(衛食第 6 号の 2,昭和 62 年 1 月 20 日)
  6. 厚生省通知:「生めん類の衛生規範等について 」(衛食第 61 号,平成 3 年 4 月 25 日)

 

株式会社AHC

群馬県前橋市小相木343番地1

TEL027-253-1515

キーワード
浮遊菌 空中微生物

 

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