経営ビジョンとビジネスモデルの方向性
経営ビジョン
当社は1977年、群馬県初の獣医療コンサルティング会社として創業し、生産者とともに家畜の衛生と予防に取り組んできました。その技術を食品と環境の検査に広げ、現在は微生物検査・成分分析・保存試験・受託研究を行っています。
検査の世界では、依頼から報告までをオンラインで完結させ、結果をデータとして受け取り自社の品質管理に組み込む顧客が増えています。一方で、少人数の検査機関は、受付・記録・報告の手作業に時間を取られ、試験そのものに使える時間が減っています。データとデジタル技術をどう使うかが、検査機関の競争力を左右する時代になりました。
当社は企業理念として「ヒトが健やかであること、その構築・持続に必要な環境づくりを企業活動として取り組んでまいります。」を掲げています(会社案内に掲載)。また、ISO/IEC 17025の認定を受けた微生物試験室の品質方針では、試験で得た知識と技術をバリューチェーンの上流(原料生産者)から下流(消費者・地域社会)まで役立てること、必要なイノベーションを重視し、顧客に信頼され健康な社会の発展に貢献することを掲げています。この理念と方針のもとで、次の姿を目指します。
- 依頼から報告・請求までのすべての記録をデータでつなぎ、空いた時間を試験の設計と新しい試験法の立ち上げに振り向ける
- メニューにない試験も依頼者の目的から組み立てて受ける「断らない検査機関」であり続ける
- 蓄積したデータを根拠に、受けられる試験の幅を広げ続ける
ビジネスモデルの方向性
- 業務の一元化:受付・試験・報告・請求を自社開発の業務システムで一元管理し、正確な報告を早く届ける。
- データにもとづく経営判断:問合せ・受注・辞退の理由を記録して分析し、新しい試験法と設備投資を決める。
- 取引先とのデジタル接点:顧客や販売店とのやり取りをウェブで受け、紙・電話・FAXによる転記をなくす。
DX戦略
経営ビジョンを実現するため、次の4つの戦略に取り組みます。いずれも自社の業務を変えるための取組で、データの蓄積と活用を軸にしています。
戦略1 受付から報告・請求までのデータの一元化
顧客約860社の情報、試験の依頼、試験結果、報告書、売上を、自社で開発した受託管理システムで一元管理しています。報告書は電子で届け、紙の依頼書からの転記や、別々の台帳への二重入力をなくします。
戦略2 データにもとづく試験メニューと設備投資の判断
すべての問合せについて、内容・受注の可否・辞退した理由を記録しています。辞退の理由を分析し、設備や試験法がないために受けられなかった依頼を次に受けられるようにすることを、設備投資と新しい試験法の立ち上げの判断基準にしています。例えば、辞退理由の分析から、ミネラル・重金属分析の設備導入を計画しています。
戦略3 調達と品質記録のデジタル化
試薬・培地の発注・承認・受入を自社開発の発注管理システムで管理し、ISO/IEC 17025で求められる受入の記録と連動させています。同じ品目の単価の推移を記録し、値上げや他社のほうが安い場合に気づけるようにして、調達コストを管理します。今後、菌株・試薬在庫・機器の台帳も同じ仕組みに載せます。
戦略4 取引先とのやり取りのデジタル化
動物薬の販売店からの投薬相談をウェブで受け付け、獣医師の診療記録までデータでつないでいます。社内の出張精算もウェブで行い、会計への入力の手間を減らしています。取引先と社内の双方で、紙・電話・FAXからの転記をなくしていきます。
推進体制とデジタル人材
推進体制
- DXの推進責任者は代表取締役が務め、業務システムの企画・開発・運用を自ら主導します。
- 試験室・営業・製造の各担当者は、システムの利用者であると同時に改善の提案者です。変更点はシステムのお知らせ機能で全員に周知し、改訂の履歴を残します。
- 自社だけで作り込まず、外部のクラウドサービスや生成AIなどの技術を積極的に組み合わせて開発します。
デジタル人材の育成・確保
- 新しいシステムや機能を導入するときは、手順書とお知らせで使い方を示し、全員が使える状態にしてから切り替えます。
- 理化学分析とデータの扱いに強い技術者を、中途採用で確保します。
ITシステム環境の整備
- クラウドでの自社開発:受託管理・発注管理・投薬相談受付・出張精算の各システムを、クラウド上で自社開発・運用しています。業務の変化に合わせて社内で素早く改修できることを重視しています。
- システム間のデータ連携:システム同士でデータを受け渡し、同じ情報を二度入力しない構成にします。
- 変更管理:プログラムは非公開の環境で版を管理し、本番に反映する前に検証用の環境で動作を確かめます。稼働中のシステムに影響する変更は、影響の範囲と戻し方を決めてから行います。
- 情報資産の保護:機密性の高い情報は社内のネットワーク内の暗号化した保存領域に置き、クラウドに置く情報と分けて管理します。
- 投資:毎年度、システムの開発・運用とセキュリティ対策の費用を予算として確保します。
サイバーセキュリティ対策は、別に公表する「情報セキュリティ基本方針」に沿って行います。
成果指標
DX戦略の達成度を、次の指標で毎年確認します。
| 戦略 | 指標 | 種類 | 現状値(2026年度) | 目標(2029年度) |
|---|---|---|---|---|
| 2 データにもとづく判断 | 設備・試験法がないことを理由に辞退した問合せの件数 | 効果 | 3件(2026年7〜10月) | 半減 |
| 2 データにもとづく判断 | 新たに立ち上げた試験法の数 | 進捗 | ―(2026年度から集計) | ― |
| 3 調達・品質記録 | 試薬・培地の発注のうちシステムを通したものの割合 | 進捗 | 100% | 100%を維持 |
| 3 調達・品質記録 | システムに載せた台帳(菌株・試薬在庫・機器) | 進捗 | 0/3 | 3/3 |
指標と目標は、取締役が年1回見直し、結果をこのページで更新します。
代表取締役メッセージ
データの力で、断らない検査機関であり続ける
当社は1977年の創業以来、生産者や食品事業者の皆さまとともに、衛生と安全の課題に取り組んできました。メニューにない試験でも、依頼者が本当に知りたいことから試験を組み立ててお受けする。これが当社の変わらない姿勢です。
この姿勢を少人数で続けるために、私は自ら業務システムの開発に取り組んできました。受付から報告・請求まで、発注から受入の記録まで、取引先とのやり取りまでをデータでつなぎ、手作業の転記を減らしてきました。生まれた時間は、新しい試験法の立ち上げと、お客様一人ひとりの相談に充てています。
DXは道具を入れることではなく、仕事の進め方そのものを変えることだと考えています。記録を積み重ね、その記録を根拠に次の一手を決める。社員一人ひとりがデータを使って自らの仕事を良くしていける会社を目指し、これからも取組を続けてまいります。
株式会社AHC 代表取締役 飯塚 和志宗
