油脂の酸化劣化をどのように管理するかは、食品の品質保証や風味維持にとって非常に重要なテーマです。
本記事では、劣化指標であるカルボニル価(CV)についてご紹介します。
カルボニル価とは?
カルボニル価(Carbonyl Value, CV)とは、油脂中に含まれるカルボニル化合物(主にアルデヒドやケトン)の総量を示す指標で、単位は一般的にμmol/g(マイクロモル・パー・グラム)で表されます。これらの化合物は、油脂の酸化が進むと生成され、特有の異臭や風味劣化の原因となります。
なぜカルボニル価を測定するのか
カルボニル価は、油脂の酸化が進んだ“結果”を反映する指標であり、消費者が実際に感じる風味の劣化と最も強く相関する数値です。そのため、以下のような実務的な場面での活用が有効です。
- 原料油脂の受け入れ検査
- フライ油などの交換タイミングの判断
- 賞味期限の科学的根拠
- クレーム対応時の原因特定
酸価(AV)・過酸化物価(POV)との違い
油脂の劣化は段階的に進行し、それぞれの段階に対応する指標があります。
指標 | 目的 | 生成物 | 特徴 |
---|---|---|---|
酸価 (AV) | 加水分解の進行度 | 遊離脂肪酸 | 初期劣化を示す |
過酸化物価 (POV) | 一次酸化の進行度 | 過酸化物 | 酸化初期の指標(後に減少) |
カルボニル価 (CV) | 二次酸化の進行度 | アルデヒド・ケトン | 臭気の原因、最終評価に最適 |
特にPOVはピークを迎えると減少に転じるため、CVを併用しないと酸化の進行を見誤るリスクがあります。
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カルボニル価の目安
CVの評価は以下のように整理されます。
- 10 μmol/g 以下:新鮮で良好な状態
- 20~40 μmol/g:劣化が感じられ始める段階
- 50 μmol/g 以上:明らかな劣化(臭気、風味の悪化)
※これらの基準は製品の種類や用途により調整が必要です。
品質管理への具体的活用法
- 工程管理:CVを用いることで、揚げ油の交換時期を数値で明示可能。
- 保存試験:経時劣化をCVで定量し、賞味期限設定の根拠とする。
- 官能評価との連携:CVと風味評価の相関を蓄積することで、社内基準として活用。
まとめ
カルボニル価は、POVやAVでは見逃されやすい“風味の変化”を数値化できる有効な指標です。品質の裏付けとなる科学的なデータを蓄積することで、消費者満足度の向上やリスク低減に直結します。油脂製品の品質管理において、CVの導入をぜひご検討ください。
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