📋 こんなご相談をよくいただきます
- 発芽玄米のGABA含有量を、パッケージに表示できる数値として出したい。
- 発酵によってGABAがどれだけ増えたのか、仕込み条件ごとに比較したい。
- 機能性表示食品の届出に使うため、関与成分としての定量値が要る。
- 原料ロットによってGABA量がばらつくので、受入時に確かめたい。
GABA分析は、食品に含まれるγ-アミノ酪酸(Gamma-Amino Butyric Acid)を定量する分析です。GABAはアミノ酸の一種でありながらタンパク質を構成しない特殊な成分で、遊離の状態で存在します。そのため、遊離アミノ酸分析と同じ考え方で測定します。
発芽玄米、トマト、味噌、醤油、漬物、乳酸菌発酵飲料、チョコレートなど、GABAを訴求する食品は年々増えています。一方で、GABAは加工条件によって含有量が大きく動く成分でもあります。この記事では、どの場面で測る必要があるのか、どう測るのか、表示に使うときに何を確認すべきかを整理します。
GABA分析が必要になる場面
GABAを測る動機は、大きく分けて「表示のため」と「製造条件を決めるため」の二つです。前者は一度きりの精密な値が要り、後者は同じ条件で繰り返し測れることが要ります。求めるものが違うので、依頼の前に整理しておくと無駄がありません。
| 場面 | 目的 | 必要になるデータ |
| 機能性表示食品の届出 | 関与成分の含有量を根拠づける | 1日摂取目安量あたりの含有量、複数ロットの実測値 |
| パッケージへの含有量表示 | 「GABA○mg配合」の裏づけ | 製品100gあたり、または1食あたりの含有量 |
| 製造条件の最適化 | 発芽時間・発酵温度の条件出し | 条件別の比較値(同一手法で複数点) |
| 原料の受入検査 | 仕入れたGABA高含有原料の確認 | 規格値に対する適否、ロット間のばらつき |
| 賞味期限内の安定性確認 | 保存中にGABAが減らないかを見る | 保存期間ごとの経時データ |
とくに機能性表示食品では、届出時の含有量が賞味期限末まで担保されている必要があります。製造直後の値だけで届け出ると、期限間際の製品で下回るおそれがあります。保存試験と組み合わせて設計するのが安全です。
GABAとは何か
GABAは炭素4個の直鎖アミノ酸で、グルタミン酸から脱炭酸酵素(グルタミン酸脱炭酸酵素)の働きによって生成します。この反応は植物にも微生物にも備わっているため、発芽・発酵という工程を経る食品でGABAが増えるという現象が起きます。
| 項目 | 内容 |
| 正式名称 | γ-アミノ酪酸(4-アミノブタン酸) |
| 分類 | 非タンパク質性アミノ酸。遊離の形で存在する |
| 生成経路 | グルタミン酸の脱炭酸によって生じる |
| 増える工程 | 発芽、発酵、嫌気処理、ストレス処理 |
| 主な含有食品 | 発芽玄米、トマト、味噌、醤油、漬物、発酵乳、茶葉 |
分析の観点から押さえておくべき特徴は次のとおりです。
- タンパク質に組み込まれていない。そのため加水分解を伴う総アミノ酸分析ではなく、遊離アミノ酸として抽出して測ります。
- 紫外部の吸収がほとんどない。そのままでは検出しにくいため、誘導体化という前処理を経てから測定するのが一般的です。
- 加工で増減する。原料の値と製品の値は一致しません。表示に使うなら、必ず最終製品で測ります。
- グルタミン酸と表裏の関係にある。GABAが増えるとき、原料のグルタミン酸は減っています。両方を同時に見ると工程の理解が進みます(グルタミン酸分析)。
主な分析方法
GABAは分子そのものに強い発色団を持たないため、検出できる形に変えてから測る必要があります。どの方法を選ぶかで、必要な検体量も、他のアミノ酸と一緒に測れるかどうかも変わります。
| 分析法 | 仕組み | 特徴 |
| HPLC(誘導体化) | 試薬でGABAを標識し、分離して検出する | 他の遊離アミノ酸と同時に測れる。表示用の定量に適する |
| アミノ酸自動分析計 | イオン交換で分離し、反応後に比色定量する | アミノ酸分析の標準的手法。多成分を一度に把握できる |
| LC-MS/MS | 質量で選択的に検出する | 微量域に強い。夾雑の多い試料で有利 |
| 酵素法 | GABAに特異的な酵素反応を利用する | 工程管理の日常チェックに向く。多検体を手早く処理できる |
抽出の段階で結果が決まる
GABAの分析でつまずきやすいのは、機器での測定よりも抽出の段階です。遊離アミノ酸は水や希酸に溶け出しますが、試料が油脂やデンプンを多く含むと回収率が落ちます。また、粉砕から抽出までに時間がかかると、試料中に残った酵素がグルタミン酸をGABAへ変換し続けて値が上振れすることがあります。
そのため、粉砕後すみやかに抽出し、酵素を失活させる手順が要ります。同じ製品を別々の日に測って値が合わないとき、原因は機器ではなく前処理にあることがほとんどです。
食品別の含有量と表示の考え方
食品ごとのおおよその水準を知っておくと、出てきた分析値が妥当かどうかを判断できます。ただし品種・産地・製法で幅があるため、あくまで目安として扱ってください。
| 食品 | GABAが増える要因 | 想定される訴求 |
| 発芽玄米 | 吸水・発芽の過程で酵素反応が進む | 白米との比較、発芽時間の最適化 |
| トマト・トマト加工品 | 果実そのものに含まれる。完熟で増える | 品種比較、収穫時期の設定 |
| 味噌・醤油・漬物 | 乳酸菌・麹菌の代謝で生成する | 熟成期間との相関、菌株の選抜 |
| 発酵乳・乳酸菌飲料 | GABA産生能をもつ菌株を用いる | 菌株のスクリーニング、発酵条件 |
| サプリメント | GABA原料を配合する | 配合量の検証、規格試験 |
表示に使う前に確認すること
- GABAは栄養成分表示の義務5項目には含まれません。任意で表示する成分にあたります。義務項目との関係は栄養成分表示のガイドで整理しています。
- 機能性表示食品として届け出る場合は、関与成分の分析方法を届出資料に記載する必要があります。どの手法で測ったかが問われるため、依頼時に手法を確認しておいてください。
- 「高GABA」などの強調表現には、比較対象と差の根拠が要ります。自社の従来品や一般的な同種食品との比較データを揃えておくと説明しやすくなります。
- 制度の詳細は消費者庁の公表資料が一次情報です(消費者庁)。
依頼のポイントと実務
GABA分析は、依頼の仕方で結果の使い道が変わります。事前に決めておくと手戻りがありません。
| ポイント | 確認したいこと |
| 目的 | 表示のためか、条件出しのためか。求める精度が変わります |
| 表示単位 | 100gあたりか、1食あたりか、1日摂取目安量あたりか |
| 検体の状態 | 乾燥品か、水分の多い加工品か。抽出条件に影響します |
| 検体数 | 1点で足りるか、ロット間差を見るため複数必要か |
| 併せて測る項目 | グルタミン酸や他の遊離アミノ酸を同時に見るか |
👥 こんな方からのご相談を承ります
- 発芽玄米・雑穀を扱う米穀業、精米業の品質管理担当の方
- 味噌・醤油・漬物など発酵食品の製造メーカーの方
- GABA産生乳酸菌を用いた製品を開発している方
- 健康食品・サプリメントの受託製造、企画開発をされている方
- 機能性表示食品の届出資料を準備されている方
5ステップで進む分析の流れ
AHCの対応範囲
当社はISO/IEC 17025認定ラボ(PJLA L26-134)です。
GABAは遊離アミノ酸分析の枠組みで測定します。グルタミン酸をはじめとする他の遊離アミノ酸と同時にご依頼いただくこともできます。費用は項目数と検体数により変わるため、個別にお見積りいたします。
なお、本記事で述べた含有量の水準や挙動は、一般的な食品を前提とした整理です。実際の検体では、共存する成分や加工履歴によって抽出効率が変わることがあります。試料の組成が特殊な場合は、事前にご相談ください。
🏢 株式会社AHCについて
1977年創業の食品検査ラボとして、微生物検査と成分分析を全国対応で承っています。関連記事: 遊離アミノ酸分析 / 機能性アミノ酸 BCAA / グルタミン酸分析 / 成分分析サービス
まとめ
GABAは、原料に含まれる量よりも「工程でどれだけ増やせたか」が問われる成分です。発芽・発酵という工程そのものが価値になるため、条件を変えながら測り、最も増える点を探す使い方が中心になります。
一方、表示に使う数値は最終製品で、しかも賞味期限を通して担保できる水準で押さえる必要があります。開発段階の最大値をそのまま表示に持ち込むと、期限間際に下回るおそれがあります。この二つを分けて考えるのが、GABA分析を無駄にしないこつです。
分析法の選び方や検体数の組み方については、お問い合わせフォームまたはお電話(027-253-1515/平日8:30〜17:30)でご相談ください。
外部参考資料
