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食品への虫の混入|種類でわかる原因と対応の実務

📋 こんなご相談をよくいただきます

  • お客様から虫が入っていたと連絡があった。
  • 未開封だったと言われたが、工場では考えにくい。
  • 同じ虫が別の商品でも出た。原因を特定したい。
  • 回答期限が迫っている。何を根拠に説明すればよいか。
  • 保健所に報告する必要があるか判断したい。

食品への虫の混入は、クレームのなかでも対応が難しい部類です。理由は、原因の切り分けが難しいからです。工場で入ったのか、流通中なのか、あるいは家庭での保管中なのか。どれも可能性があります。しかし、手がかりはあります。それが虫の種類です。虫には、それぞれ好む食品と生息場所があるためです。つまり、種類が分かれば経路を絞り込めます。本記事では、その考え方と実務を解説します。

虫が見つかったら、まずすること

初動を誤ると、その後の同定ができなくなります。とくに次の4点にご注意ください。

やってはいけないこと 理由
つぶす・ピンセットで強く挟む 形態観察に必要な部位が失われる
水で洗う 体表の毛や鱗粉が落ち、判別が難しくなる
セロハンテープで貼る 剥がすときに壊れ、DNAも取り出しにくくなる
常温で放置する 乾燥や腐敗が進み、状態が悪くなる

正しい扱い方は単純です。小さな密閉容器に入れて、冷蔵で保管してください。乾いた状態のままで構いません。そのうえで、見つかった状況を記録します。商品名、製造日、開封の有無、発見場所、発見日時。これらは同定結果と組み合わせて初めて意味を持ちます。

なお、包装も一緒に保管してください。後述しますが、包装に穴があるかどうかが判断材料になります。

虫の種類でわかること

ここが本題です。虫の種類は、混入した場所と時期を推定する材料になります。代表的なものを整理しました。

好む食品 疑うべきこと
タバコシバンムシ 菓子、香辛料、乾麺、畳、漢方薬 保管環境からの発生。食性が広い
ノシメマダラメイガ 穀類、粉類、乾燥果実、菓子、木の実 包装の食い破りによる侵入
コクゾウムシ 米、麦、とうもろこし、乾麺 原料穀物からの持ち込み
チャタテムシ類 乾燥食品、段ボール、カビ 湿気とカビの発生。屋内で目撃が多い
カツオブシムシ類 乾物、動物質食品、衣類 屋外からの飛来、衣類経由
クロゴキブリ 雑食 施設内への侵入経路と清掃状況

コクゾウムシは分かりやすい例です。この虫は、米や麦の1粒ごとに卵を産みます。そして幼虫は、蛹になるまで穀粒の内部で過ごします。したがって、外からは見つかりません。つまり、原料の段階で既に入っていた可能性が高くなります。

一方、チャタテムシが出たなら、湿度を疑います。この虫はカビを餌にするためです。カビの発生と結びつくので、保管環境の見直しにつながります。

⚠️ シバンムシが出たら、別の虫にも注意

シバンムシが大量に発生している場所では、シバンムシアリガタバチという寄生蜂も発生していることがあります。この蜂は人を刺します。つまり、混入クレームだけでなく、施設内での被害につながる恐れがあります。発生源の特定を急いでください。

未開封でも混入することがあります

ここは誤解が生じやすい点です。「未開封だったのだから工場で入ったはずだ」という主張を受けることがあります。しかし、必ずしもそうとは限りません。

貯穀害虫の幼虫には、強いあごがあります。そのため、薄いフィルムや包装紙を食い破って侵入します。タバコシバンムシの幼虫は噛む力が強く、プラスチックの容器にも穴を開けます。ノシメマダラメイガも同様で、包装を食い破って中に入ります。

したがって、包装の確認が重要になります。次の点を見てください。

  • 包装に小さな穴が開いていないか。内側からか外側からかも見ます。
  • 糸を吐いた跡がないか。メイガ類の幼虫は糸を出します。
  • オレンジがかった細かい粒がないか。ノシメマダラメイガの糞の特徴です。
  • 脱皮殻や繭が残っていないか。中で成育した証拠になります。

これらが見つかれば、包装後に侵入したか、あるいは中で成育したことになります。逆に痕跡が何もなければ、製造工程での混入を検討します。

工場内か流通後かを見分ける手がかり

種類だけでは決まりません。そこで、虫の状態も合わせて見ます。

観察点 読み取れること
加熱による変形や変色 加熱工程の前に入っていた可能性
形がきれいに残っている 加熱後、または包装後の混入
幼虫・蛹・脱皮殻がある その場で成育した。時間が経過している
成虫だけが1匹 外部からの飛来・侵入の可能性
工場の捕虫トラップと一致 自社での発生を疑う根拠になる

最後の点は見落とされがちです。工場でモニタリングを行っていれば、その記録と突き合わせられます。同じ種が捕れていれば自社発生を疑いますし、捕れていなければ反証の材料になります。

同定の2つの方法

虫の名前を決める方法は、大きく2つあります。検体の状態によって使い分けます。

方法 向いている検体 得られる結果
簡易同定(形態観察) 形が残っている成虫 和名の候補と識別のポイント
DNA同定 断片、幼虫、加熱変形したもの 種レベルの学名と一致率

形が残っていれば、形態観察で足ります。マイクロスコープで拡大し、識別に使う部位を確認します。費用も期間も抑えられます。

一方、断片しか残っていない場合は形態観察が困難です。加熱で変形したものや、種の判別が難しい幼虫も同様です。そこでDNAを使います。塩基配列を読み、データベースと照合して種を特定します。詳しくは虫類の遺伝子同定をご覧ください。

食品 虫 混入の調査依頼と実務

ご依頼の前に整理しておくと、調査が早く進みます。

確認事項 なぜ必要か
開封の有無 侵入経路の検討が変わるため
製造日と発見日 成育に要する期間と照らすため
保管の状況 温度と湿度が発生条件に関わるため
同じ苦情の有無 単発か継続かで対応が変わるため
包装と現品 穴や糸の痕跡を確認するため

AHCの対応範囲

項目 対応
昆虫簡易同定(形態観察) ✅ 承ります。スケール入りの写真を添えて報告
虫DNA同定試験 ✅ 承ります。塩基配列から種を判定
虫以外の異物の材質推定 ✅ 承ります
ふきとり検査・環境の微生物検査 ✅ 承ります
駆除作業・防虫工事 ⚠️ 対応範囲外。専門業者をご検討ください

費用は検体数と方法により変わるため、個別にお見積りいたします。虫以外の異物については異物検査とは、微細なものは微小異物検査で解説しています。

🏢 株式会社AHCについて

1977年創業の食品微生物検査ラボとして、微生物検査・異物検査・成分分析を全国対応で承っています。群馬県前橋市に試験室を構えています。関連記事:食品クレームの異臭対応 / 拭き取り検査とは

まとめ

虫の混入は、種類が分かると見え方が変わります。コクゾウムシなら原料穀物、チャタテムシなら湿気とカビ、シバンムシなら保管環境。つまり、対策の方向が決まります。

未開封という事実だけでは、工場での混入とは言い切れません。貯穀害虫の幼虫は包装を食い破るためです。したがって、包装の痕跡まで含めて確認してください。初動では、つぶさない、洗わない、テープで貼らないことが大切です。そのうえで密閉して冷蔵し、状況を記録します。

当社では簡易同定とDNA同定の両方を承っています。ご相談はお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。お電話(027-253-1515)でも承ります。

外部参考資料

食品への虫の混入調査(昆虫同定と包装の食い破り痕)

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