📋 こんなご相談をよくいただきます
- 大豆加工品のイソフラボン量を、アグリコン換算で出したい。
- 取引先から「アグリコンとして何mgか」と聞かれたが、手元の値と単位が合わない。
- 納豆・味噌・豆乳で、発酵の有無によってどう変わるのかを比べたい。
- サプリメントの配合量が規格どおり入っているかを確かめたい。
大豆イソフラボン分析は、大豆および大豆加工品に含まれるイソフラボン類をHPLCで個別に定量する分析です。この成分の難しさは、測定そのものよりも「どの形で報告するか」にあります。イソフラボンは食品中でいくつもの化学形をとり、形が違えば分子量も違うため、合計値の出し方を誤ると数値が実態から離れます。ポリフェノール分析の一分野にあたる成分です。
この記事では、なぜ形の区別が要るのか、アグリコン換算とは何をしているのか、依頼時に何を指定すればよいのかを整理します。
大豆イソフラボン分析が必要になる場面
| 場面 | 目的 | 必要になるデータ |
| 機能性表示食品の届出 | 関与成分の含有量を裏づける | アグリコン換算値、1日摂取目安量あたりの量 |
| 原料の受入・規格確認 | 大豆胚芽抽出物などの規格適否 | 規格値との比較、ロット間のばらつき |
| 製品開発・工程設計 | 加熱・発酵による形の変化を追う | 配糖体とアグリコンの内訳(個別値) |
| 品種・産地の比較 | 原料大豆の選定根拠をつくる | 同一手法での横並びデータ |
| 輸出時の成分証明 | 相手国から求められる分析値 | 先方が指定する報告形式に合わせた値 |
このうち最も相談が多いのは、換算の食い違いです。原料メーカーの規格書が「イソフラボン30%」と書いていても、それが配糖体を含む総量なのかアグリコン換算なのかで、実際の量は1.6倍ほど違います。取引先とやりとりする前に、どちらで話しているかを揃えておく必要があります。
イソフラボンの種類とその関係
大豆イソフラボンは、骨格となる3種類(ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン)に、糖やアセチル基、マロニル基が結合した形で存在します。合計12種類が知られており、生の大豆ではその大半が糖の付いた配糖体です。
| 分類 | 該当する成分 | 特徴 |
| アグリコン | ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン | 糖が外れた形。分子量が小さい。発酵食品に多い |
| 配糖体 | ダイジン、ゲニスチン、グリシチン | グルコースが結合した形。生大豆の主成分 |
| マロニル配糖体 | マロニルダイジンなど3種 | 生大豆に最も多い。加熱で分解しやすい |
| アセチル配糖体 | アセチルダイジンなど3種 | 加熱の過程で生じる。加工履歴の指標になる |
アグリコン換算とは何をしているのか
配糖体は糖の分だけ分子量が大きく、同じ重量でも中身のイソフラボン骨格は少なくなります。ダイジン(配糖体)とダイゼイン(アグリコン)では、分子量の比がおよそ1.6対1です。したがって配糖体1mgは、アグリコンに直すと約0.63mgに相当します。
アグリコン換算とは、測定した各成分の値にそれぞれの分子量比を掛け、骨格の量として足し合わせる計算です。形の異なる12成分を共通の物差しに載せる作業だと考えるとわかりやすいと思います。
- 単純な合計とは違います。12成分の測定値をそのまま足すと、配糖体の糖の重さまで数えることになり、実態より大きな値が出ます。
- 換算するには個別に測る必要があります。成分ごとに係数が違うため、総量として一括で測る方法では正確な換算ができません。
- 報告形式を先に決めておきます。アグリコン換算値だけでよいのか、12成分の内訳も要るのかで、報告書の形が変わります。
加工による形の変化
イソフラボンの総量は加工でそれほど減りませんが、形の内訳は大きく動きます。この変化を追うことが、発酵や加熱の設計に役立ちます。
| 食品 | 主に含まれる形 | 想定される訴求 |
| 生大豆・煮豆 | マロニル配糖体、配糖体 | 品種比較、原料選定の根拠 |
| 豆乳・豆腐 | 配糖体が中心。加熱でアセチル体も生じる | 製法による残存率、歩留まりの検証 |
| 納豆・味噌・醤油 | アグリコンの割合が高い | 発酵の進み具合、熟成期間との相関 |
| 大豆胚芽抽出物 | 原料の設計による | 規格試験、配合量の設計 |
| サプリメント | アグリコン強化型の製品もある | 表示値の検証、賞味期限内の安定性 |
表示に使う前に確認すること
- 大豆イソフラボンには摂取目安量の考え方が示されています。食品安全委員会が特定保健用食品としての一日上乗せ摂取量について評価を行っており、製品設計の前に確認が要ります。
- 「イソフラボン○mg配合」の単位を、アグリコン換算か配糖体を含む総量かで明示します。単位を書かないと、取引先で読み替えられるおそれがあります。
- 栄養成分表示の義務項目には含まれません。任意表示の成分です(栄養成分表示のガイド)。
- 制度の詳細は消費者庁および食品安全委員会の公表資料が一次情報です。
依頼のポイントと実務
| ポイント | 確認したいこと |
| 報告の形式 | アグリコン換算値のみか、12成分の内訳も要るか |
| 比較対象の有無 | 従来品や他社品と並べるなら、同時に依頼すると条件が揃います |
| 検体の形状 | 粉末か、水分の多い加工品か。抽出条件が変わります |
| 規格書の有無 | 原料の規格書があれば、換算の前提を照合できます |
| 提出先 | 届出用か、取引先提出用か。記載事項が変わることがあります |
👥 こんな方からのご相談を承ります
- 豆腐・豆乳・納豆など大豆加工品の製造メーカーの方
- 味噌・醤油の醸造元で、熟成条件を検討されている方
- 大豆胚芽抽出物を扱う原料商社、健康食品メーカーの方
- 機能性表示食品の届出資料を準備されている方
- 取引先から成分証明を求められている方
5ステップで進む分析の流れ
AHCの対応範囲
当社はISO/IEC 17025認定ラボ(PJLA L26-134)です。
イソフラボンは成分ごとに分離して定量し、必要に応じてアグリコン換算値をあわせて報告します。ポリフェノール類の他項目と同時にご依頼いただくこともできます。費用は項目数と検体数により変わるため、個別にお見積りいたします。
なお、ここで述べた換算の考え方は、成分が既知の12種に収まる場合を前提としています。実際の検体では、共存する色素や添加物が測定に影響することがあります。組成が特殊な原料については、事前にご相談ください。
🏢 株式会社AHCについて
1977年創業の食品検査ラボとして、微生物検査と成分分析を全国対応で承っています。関連記事: ポリフェノール分析 / ポリフェノールと健康食品 / 栄養成分表示のガイド / 成分分析サービス
まとめ
大豆イソフラボンの分析は、値を出すことより、その値が何を指しているかを揃えることに手間がかかります。配糖体とアグリコンでは分子量が違い、単純に足せば実態より大きな数字になります。取引先や届出先と単位の前提が食い違ったまま進むと、あとで全部やり直しになりかねません。
依頼の前に「アグリコン換算で報告するのか」「内訳まで要るのか」の二点を決めておけば、その後がすんなり進みます。判断に迷う場合は、想定している提出先をお知らせいただければ、こちらで形式をご提案します。
ご相談はお問い合わせフォームまたはお電話(027-253-1515/平日8:30〜17:30)へお願いします。
外部参考資料
