📋 こんなご相談をよくいただきます
- 真空パックに変えたが、検査項目はそのままでよいか。
- 脱酸素剤を入れたら、袋が膨れるようになった。
- 一般生菌数は基準内なのに、においが変わった。
- レトルトのつもりで作ったが、常温で置けるのか不安。
- 取引先から嫌気性菌の検査を求められた。
真空パックにすると、腐りにくくなると考えられがちです。しかし正確には違います。腐り方が変わるのです。酸素を減らせば、酸素を必要とする菌は抑えられます。ところが、酸素がないほうが都合のよい菌もいます。つまり、有利になる菌が入れ替わります。したがって、包装を変えたら検査項目も見直す必要があります。本記事では、その考え方を整理します。
包装で酸素の状態が変わります
まず、包装形態ごとの違いを押さえます。同じ「密封」でも中身の環境は違います。
| 包装 | 袋の中の状態 | 主なねらい |
| 真空包装 | 空気を抜き、酸素がごく少ない | 酸化とカビの抑制 |
| 脱酸素剤の封入 | 残った酸素を薬剤が吸収する | 見た目を保ちつつ無酸素に近づける |
| ガス置換包装 | 窒素や炭酸ガスに入れ替える | 形をつぶさずに酸素を減らす |
| 通常の密封 | 空気が残っている | 異物と乾燥の防止 |
いずれも酸素を減らす方向です。ただし、減らし方が違います。真空は物理的に抜き、脱酸素剤は化学的に吸収します。ガス置換は別の気体で置き換えます。
見落とされやすいのがフィルムの酸素透過性です。素材によっては、わずかに酸素が入ります。したがって、包装材の仕様も設計要素になります。
有利になる菌が入れ替わります
ここが本題です。酸素の有無で、菌の顔ぶれが変わります。
| 分類 | 酸素との関係 | 代表例 |
| 好気性菌 | 酸素がないと増えない | カビ、多くの腐敗細菌 |
| 通性嫌気性菌 | どちらでも増える | 乳酸菌、リステリア |
| 偏性嫌気性菌 | 酸素があると増えない | ボツリヌス菌、ウェルシュ菌 |
酸素を抜くと、上の段が抑えられます。その結果、下の2段が伸びやすくなります。つまり、カビは生えなくなる代わりに、別の問題が起きます。
よくあるのが乳酸菌による変化です。乳酸菌は酸素がなくても増えます。増えるとガスを出し、袋がふくらみます。同時に酸味が出ます。カビが生えていないのに商品にならないという状態です。乳酸菌数の測定もご覧ください。
リステリアも要注意です。この菌は酸素の有無を問わず増え、しかも低温でも増殖します。そのため、真空パックの要冷蔵品では警戒が必要です。詳しくはリステリア検査で解説しています。
レトルトに見えて、レトルトではない食品
最も注意すべき点です。外観が似ていても、中身の扱いはまったく違います。
容器包装詰低酸性食品という区分があります。pHが4.6を超え、水分活性が0.94を超える食品を密封し、120℃4分間に満たない条件で殺菌したものです。見た目はレトルトパウチとよく似ています。
しかし、ボツリヌス菌の芽胞は120℃4分以上でなければ死滅しません。したがって、この区分の食品には芽胞が生き残っている可能性があります。そのうえ袋の中は無酸素です。芽胞にとって、発芽するのに好都合な環境が揃います。
⚠️ 常温で置けるかどうかは、見た目では判断できません
常温保存できるのは「レトルトパウチ食品」または「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」と表示されたものです。これらは120℃4分以上の加圧加熱殺菌を経ています。それ以外の密封食品は、10℃以下での冷蔵が必要です。製造側は、要冷蔵である旨を目立つ大きさと色で表示してください。
判断の分かれ目は3つの数値です。pH4.6、水分活性0.94、120℃4分。 自社製品がどこに当てはまるかを確認してください。どれかを外れていれば、常温流通はできません。
なお、膨張や酪酸のようなにおいがある製品は、絶対に喫食しないでください。
検査項目を組み直す
一般生菌数は、通常35℃前後の好気培養で測ります。つまり、酸素がないと増えない菌は、この方法では検出されません。 真空パックでリスクが上がるのは、まさにその菌たちです。
したがって、次のように足していきます。
| 項目 | 何のために測るか |
| 一般生菌数 | 全体の汚染度。基礎として残す |
| 嫌気性菌数 | 酸素のない環境で増える菌を捉える |
| クロストリジウム属菌 | 芽胞を作る偏性嫌気性菌の把握 |
| 乳酸菌数 | 膨張と酸敗の原因を確かめる |
| リステリア | 冷蔵でそのまま食べる製品の確認 |
| pH・保存試験 | 流通条件で変化が起きないかを見る |
芽胞の性質は好気性芽胞菌数とはをご覧ください。偏性嫌気性菌の詳細はクロストリジウム属菌で解説しています。
保存試験は流通条件で行う
温度の設定が肝心です。要冷蔵品を常温で試験しても、実態と合いません。逆に、想定より高い温度で置かれる可能性があるなら、その条件も見ておくべきです。夏場の配送や、店頭での陳列を思い浮かべてください。
真空パック 検査の依頼と実務
依頼前に整理しておくと、項目が早く決まります。
| 確認事項 | なぜ必要か |
| 包装の形態 | 真空か脱酸素剤かガス置換かで想定菌が変わるため |
| 殺菌の条件 | 芽胞が生き残る条件かどうかを判断するため |
| 製品のpH | 低酸性食品に当たるかを確かめるため |
| 流通と保存の温度 | 保存試験の条件を決めるため |
| 加熱の有無 | そのまま食べる製品は基準が厳しくなるため |
AHCの対応範囲
| 項目 | 対応 |
| 一般生菌数・大腸菌群・黄色ブドウ球菌 | ✅ ISO/IEC 17025認定範囲 |
| 嫌気性菌数・クロストリジウム属菌 | ✅ 承ります |
| ウェルシュ菌・セレウス菌 | ✅ 承ります |
| リステリア・乳酸菌数 | ✅ 承ります |
| 保存試験・恒温試験・pH測定 | ✅ 承ります |
| ボツリヌス毒素の検査 | ⚠️ 対応範囲外。実施機関をご案内します |
当社はISO/IEC 17025認定ラボ(PJLA L26-134)です。費用は項目数と検体数により変わるため、個別にお見積りいたします。
期限設定とあわせてご相談いただくことも多い分野です。賞味期限の検査もご覧ください。
🏢 株式会社AHCについて
1977年創業の食品微生物検査ラボとして、微生物検査と成分分析を全国対応で承っています。群馬県前橋市に試験室を構えています。関連記事:ウェルシュ菌の検査 / 一般生菌数の検査
まとめ
真空パックは腐敗を止める魔法ではありません。酸素を減らすと、好気性菌は抑えられます。その一方で、乳酸菌や嫌気性菌が伸びやすくなります。つまり、変敗の主役が入れ替わります。
そのため、検査項目も組み直してください。一般生菌数は好気培養なので、嫌気性菌を拾えません。嫌気性菌数やクロストリジウム属菌を足すことで、はじめて実態が見えます。
そして、レトルトとの区別を明確にしてください。pH4.6、水分活性0.94、120℃4分。この3つを外れる密封食品は、冷蔵が必要です。
当社では真空パック食品の微生物検査を承っています。ご相談はお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。お電話(027-253-1515)でも承ります。
外部参考資料
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