📋 こんなご相談をよくいただきます
- 洗浄が行き届いているか、その場で確かめたい。
- ATP検査を導入したが、数値の読み方が分からない。
- RLUは菌数に換算できるのか。
- 培養検査とどちらをやればよいのか。
- 基準値をいくつに設定すべきか決まらない。
ATPふきとり検査は、洗浄したあとの汚れを数値にする方法です。綿棒でふき取り、測定器に入れると10秒ほどで結果が出ます。培養が不要なので、その場で判断できます。ただし、大きな誤解があります。この数値は菌の数ではありません。ここを取り違えると、検査の意味が変わってしまいます。本記事では、原理から使い分けまで整理します。
何を測っているのか
ATPは、生物がエネルギーを蓄えるために持つ物質です。菌にも、食品にも含まれます。つまり、生き物に由来する汚れの指標になります。
測定にはホタルの発光の仕組みを使います。ルシフェラーゼという酵素がATPと反応すると光が出ます。その光の強さを機器で読み取り、数値として表示します。単位はRLUです。
現在よく使われているのはA3法です。ATPだけでなく、その分解物であるADPとAMPも同時に捉えます。汚れは時間とともに分解が進むため、3つを合わせて測るほうが実態に近づきます。
RLUは菌数ではありません
ここが本記事で最も伝えたい点です。RLUをCFU(菌数)に置き換えることはできません。
理由は2つあります。まず、測っているのは菌のATPだけではないためです。食品の残りかすや、手の脂も一緒に拾います。次に、菌の種類や状態によって1個あたりのATP量が違うためです。したがって、換算式は成り立ちません。
| 測定結果 | 読み取れる状態 |
| RLUが高く、菌も多い | 洗い残しが多く、菌も残っている |
| RLUが高く、菌は少ない | 殺菌はできたが、汚れが残っている |
| RLUが低い | 洗い残しが少なく、望ましい状態 |
2行目に注目してください。消毒剤で菌を減らしても、汚れが残れば数値は下がりません。そして残った汚れは、菌の栄養になります。つまり、次の増殖の原因になります。ATP検査は「殺菌できたか」ではなく「洗えたか」を見ていると考えてください。
培養検査との使い分け
両者は競合しません。見ているものが違うためです。
| 比較 | ATPふきとり検査 | 培養による拭き取り検査 |
| 対象 | 生物由来の汚れ全般 | 生きている菌 |
| 結果まで | その場で10秒ほど | おおむね2〜5日 |
| 菌の種類 | 分からない | 項目ごとに判定できる |
| 必要な設備 | 測定器と試薬のみ | 培養設備と技術が要る |
| 向く場面 | 日常の洗浄確認、教育 | 定期的な検証、記録 |
ATPの強みは速さです。培養では、結果が出るころに現場の状況が変わっています。一方ATPなら、その場で洗い直しを指示できます。改善が同じ日に完了するわけです。
ただし、菌の種類は分かりません。したがって、リステリアやサルモネラの有無を確かめるには培養が必要です。詳しくは拭き取り検査とはをご覧ください。
実務では併用が現実的です。日常はATPで回し、定期的に培養で裏を取る形です。
基準値の決め方
法令上の基準値はありません。そのため、施設ごとに決めることになります。
メーカーが示す推奨値の一例では、平滑な面が200RLU以下です。凹凸のある面や傷つきやすい面は500RLU以下とされています。あくまで目安であり、環境が違えば適した値も変わります。
そこで、自社の数値から決める方法があります。手順はこうです。
いきなり厳しい値を置くと、毎回不合格になります。それでは現場が数値を見なくなります。まず届く値から始めて、段階的に下げるほうが続きます。
測る場所を固定してください
ATPは同じ場所を継続して測ることに意味があります。ふき取る力の入れ方や面積が変わると、数値も動くためです。担当者が交代するときは、やり方を引き継いでください。
測定箇所の選び方は店舗衛生調査チェックリストが参考になります。
⚠️ 数値で人を責めないでください
高い数値が出たとき、担当者を叱ると検査が敬遠されます。洗いにくい構造だった、洗剤が合っていなかった、時間が足りなかったなど、原因は現場の条件にあることが多いものです。数値は原因を探す材料として使ってください。
店舗衛生調査での使いどころ
店舗を回る調査では、ATPの速さが生きます。その場で数値を見せながら説明できるためです。
- 洗浄前と洗浄後を測り、作業の効果を目に見える形にします。
- 高い箇所をその場で洗い直し、再測定して改善を確認します。
- 店舗間で同じ箇所を測り、ばらつきの大きい店を見つけます。
- 教育の場で使うと、なぜ洗うのかが伝わりやすくなります。
数値が残るので、記録としても使えます。調査全体の進め方は店舗衛生調査の実務ガイドをご覧ください。費用の考え方は衛生調査の料金で解説しています。
手を対象にする場合は、培養による方法もあります。手指の細菌検査とあわせてご検討ください。
ATPふきとり検査の依頼と実務
ご相談の前に整理しておくと、設計が早く決まります。
| 確認事項 | なぜ必要か |
| 検査の目的 | 教育向けか記録向けかで設計が変わるため |
| 測定したい箇所 | 材質や形状で目安が変わるため |
| 店舗数と頻度 | 巡回の計画と費用に関わるため |
| 培養検査の要否 | 菌の種類まで必要かどうかで変わるため |
| 既存の基準値 | すでに運用があれば引き継ぐため |
AHCの対応範囲
| 項目 | 対応 |
| 現地でのATP測定 | ✅ 承ります。測定器を持参します |
| 店舗衛生調査との組み合わせ | ✅ 承ります |
| 培養による拭き取り検査 | ✅ 承ります |
| 一般生菌数・大腸菌群・黄色ブドウ球菌 | ✅ ISO/IEC 17025認定範囲 |
| 手指の細菌検査 | ✅ 承ります |
当社はISO/IEC 17025認定ラボ(PJLA L26-134)です。費用は店舗数と測定箇所により変わるため、個別にお見積りいたします。
🏢 株式会社AHCについて
1977年創業の食品微生物検査ラボとして、微生物検査・環境検査・成分分析を全国対応で承っています。群馬県前橋市に試験室を構えています。関連記事:拭き取り検査とは / 一般生菌数の検査
まとめ
ATPふきとり検査は、洗浄の結果をその場で数値にします。10秒ほどで出るので、改善までが同じ日に終わります。
ただしRLUは菌数ではありません。食品の残りかすも手の脂も一緒に拾っています。したがって、CFUへの換算はできません。見ているのは「洗えたか」であって「殺菌できたか」ではない、と押さえてください。
基準値は法令にないため、自社で決めます。まず届く値から始め、運用が安定したら下げていくのが続けるコツです。
当社では店舗衛生調査に合わせた現地でのATP測定を承っています。ご相談はお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。お電話(027-253-1515)でも承ります。
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