📋 こんなご相談をよくいただきます
- 辛味の強さを、官能ではなく数値で管理したい。
- ロットによって辛さがぶれるので、原料の受入基準をつくりたい。
- 「○万スコヴィル」と表示したいが、根拠となる数値がない。
- 取引先から辛味成分の分析値を求められている。
カプサイシン分析は、唐辛子およびその加工品に含まれる辛味成分をHPLCで定量する分析です。辛さという感覚的なものを、数値として扱えるようにするための分析だと考えていただくと分かりやすいと思います。
辛味の管理を官能評価だけで行うと、評価者の慣れや体調で判断がぶれます。とくにロット間の差を追いたい場合や、取引先と基準を共有したい場合には、数値がないと話が進みません。この記事では、何を測るのか、スコヴィル値との関係はどうなっているのかを整理します。
カプサイシン分析が必要になる場面
| 場面 | 目的 | 必要になるデータ |
| 原料の受入基準づくり | 仕入れた唐辛子の辛味を揃える | ロットごとの実測値、規格範囲の設定 |
| 製品の辛味設計 | 狙った辛さに配合を合わせる | 配合比を振った試作品の比較値 |
| 辛さ表示の根拠 | 辛さのレベル表示を裏づける | 製品での実測値、換算の前提 |
| 品種の比較 | 栽培品種の選定根拠をつくる | 同一手法での横並びデータ |
| 取引先への提出 | 求められた分析値を出す | 先方が指定する報告形式に沿った値 |
何を測っているのか
辛味の主体はカプサイシンですが、実際には類似構造の成分がいくつも共存しており、これらをまとめてカプサイシノイドと呼びます。
| 成分 | 位置づけ |
| カプサイシン | 主成分。辛味への寄与が最も大きい |
| ジヒドロカプサイシン | カプサイシンに次いで多い。辛味の強さは同程度とされる |
| ノルジヒドロカプサイシン等 | 微量成分。品種によって比率が変わる |
| カプシエイト類 | 辛味のない類似成分。辛くない品種に含まれる |
辛味の管理を目的とするなら、カプサイシン単独ではなくジヒドロカプサイシンまで測るのが実務的です。この2成分で辛味の大部分が説明できるためです。カプサイシンだけを見ていると、品種によって実際の辛さとずれることがあります。
スコヴィル値との関係
スコヴィル値(SHU)は、もともと官能評価にもとづく指標でした。辛味を感じなくなるまで希釈した倍率を辛さの尺度とする方法です。ただし現在、製品の管理に使われるスコヴィル値の多くは、HPLCで測ったカプサイシノイド量から換算されたものです。
- 換算の係数は、どの成分をどう重みづけするかで変わります。そのため、換算値を提示するときは前提を明示する必要があります。
- 他社の公表値と比べるときは注意が要ります。換算の方法が違えば数字も違います。比較したいなら、両方を同じ条件で実測するのが確実です。
- 分析値そのものを基準にするほうが安定します。社内の受入基準や工程管理なら、mg/kgのまま扱うほうが誤解が生じません。
試料の取り方で結果が変わる
唐辛子は、果実の中でも部位によって辛味成分の量が大きく違います。ここを揃えないと、比較が成り立ちません。
| 対象 | 注意点 |
| 生果・乾燥果実 | 胎座(種のつく白い部分)に集中する。全果を均一に粉砕する |
| 粉末(一味・七味) | 比較的均一だが、七味は配合物の影響を受ける |
| ペースト・調味料 | 油分が多いと抽出条件が効く。よく混ぜてから採取する |
| キムチ・漬物 | 液と固形分で濃度が違う。全体を均一化して測る |
| スープ・加工食品 | 濃度が低く、共存成分の影響を受けやすい |
油脂を多く含む製品では、抽出の条件が結果を左右します。カプサイシノイドは油に溶けやすいため、油分に取り込まれたまま回収できないと、実際より低い値が出ます。ラー油や辛味オイルのような製品は、その旨をお伝えください。
表示に使う前に確認すること
- 栄養成分表示の義務項目には含まれません。任意表示の成分にあたります(栄養成分表示のガイド)。
- スコヴィル値を表示するなら、換算の前提を社内で決めておいてください。分析値と換算方法の両方を記録しておくと、あとで説明できます。
- 「激辛」などの表現には法令上の定義がありません。自社基準を数値で持っておくと、段階表示の一貫性が保てます。
- 制度の詳細は消費者庁の公表資料が一次情報です。
依頼のポイントと実務
| ポイント | 確認したいこと |
| 測る成分 | カプサイシン単独か、ジヒドロカプサイシンまで含めるか |
| 報告の単位 | mg/kgでの分析値か、スコヴィル換算も要るか |
| 検体の形状 | 乾燥果実、粉末、ペースト、油脂含有品のいずれか |
| 比較の設計 | ロットや配合を比べるなら、まとめて送付 |
| 検体量 | 濃度が低い製品ほど多めに必要になります |
👥 こんな方からのご相談を承ります
- 香辛料・スパイスを扱うメーカー、原料商社の方
- 辛味調味料・ラー油・辛味ソースを製造されている方
- キムチ・漬物の製造者の方
- 唐辛子の生産者、産地の生産法人の方
- 即席麺・冷凍食品で辛味レベルを管理されている方
5ステップで進む分析の流れ
AHCの対応範囲
当社はISO/IEC 17025認定ラボ(PJLA L26-134)です。
カプサイシンとジヒドロカプサイシンをそれぞれ定量し、必要に応じて合計値をあわせて報告します。ロット比較のように複数点を並べるご依頼では、同一条件でまとめて処理することで、比較に耐えるデータになります。費用は項目数と検体数により変わるため、個別にお見積りいたします。
なお、辛味の感じ方は成分量だけで決まるものではなく、油脂や糖、温度によっても変わります。分析値は管理の指標としてお使いいただき、最終的な製品評価は官能とあわせてご判断ください。油分の多い製品は抽出条件が結果を左右しますので、事前にご相談ください。
まとめ
辛さは感覚ですが、成分量は数字です。官能評価だけで管理していると、評価者が変わったときや時間が空いたときに基準がぶれます。分析値を持っておけば、ロット間の差を追え、取引先とも共通の言葉で話せます。
測るときの要点は二つです。カプサイシンだけでなくジヒドロカプサイシンまで含めること。そして、試料を均一にしてから採取すること。唐辛子は部位によって濃度が大きく違うため、ここが揃わないと数字が安定しません。
受入基準の設計を含めたご相談は、お問い合わせフォームまたはお電話(027-253-1515/平日8:30〜17:30)へお願いします。
外部参考資料
