📋 こんなご相談をよくいただきます
- 焙煎度合いでクロロゲン酸がどれだけ減るのかを、数値で押さえたい。
- コーヒー豆の生豆と焙煎豆を並べて比較したい。
- 機能性表示食品の関与成分として、含有量の根拠が要る。
- カフェインとクロロゲン酸を、同じ検体でまとめて測りたい。
クロロゲン酸分析は、コーヒー豆をはじめとする植物性食品に含まれるクロロゲン酸類をHPLCで定量する分析です。クロロゲン酸はポリフェノールの一種で、コーヒーの苦味・渋味や褐変にも関わる成分です。カフェイン分析と同じ試料・同じ手法の延長で測れるため、両方を同時にご依頼いただくことが多い項目です。
この記事では、焙煎で何が起きているのか、「クロロゲン酸」と一口に言っても何を測っているのか、依頼のときに何を指定すればよいのかを整理します。
クロロゲン酸分析が必要になる場面
| 場面 | 目的 | 必要になるデータ |
| 焙煎条件の設計 | 残存量と風味の折り合いをつける | 焙煎度合い別の実測値(同一手法で複数点) |
| 機能性表示食品の届出 | 関与成分の含有量を裏づける | 1日摂取目安量あたりの含有量、複数ロットの値 |
| 生豆の受入検査 | 産地・品種による差を把握する | ロットごとの含有量、規格との照合 |
| インスタント製品の設計 | 抽出・乾燥での残存を確かめる | 工程ごとの残存率 |
| 賞味期限内の安定性 | 保存中に減らないかを見る | 保存期間ごとの経時データ |
最も相談が多いのは焙煎条件の設計です。クロロゲン酸を残そうとすると浅煎りになり、風味の設計と衝突します。この折り合いは感覚では決めきれないため、焙煎度合いを何段階か振って測り、目標値に届く範囲を探すのが実務的です。
クロロゲン酸とは何か
クロロゲン酸は単一の物質名ではなく、キナ酸に桂皮酸誘導体が結合した一群の総称です。コーヒー豆には十数種類が含まれ、なかでもカフェオイルキナ酸が主体になります。
| グループ | 内容 | 位置づけ |
| カフェオイルキナ酸 | 3-、4-、5-の3つの異性体 | 生豆で最も多い。狭義の「クロロゲン酸」は5-CQAを指す |
| フェルロイルキナ酸 | 3-、4-、5-の3つの異性体 | 量は少ないが、焙煎で比率が変わる |
| ジカフェオイルキナ酸 | 3,4-、3,5-、4,5-の3つ | 2つ結合した形。苦味に関与するとされる |
| 分解生成物 | キナ酸、カフェ酸、ラクトン類 | 焙煎で生じる。深煎りの苦味に関わる |
「クロロゲン酸類」と「クロロゲン酸」は別のもの
依頼で行き違いが起きやすいのがここです。狭義のクロロゲン酸は5-カフェオイルキナ酸という一成分を指しますが、食品業界で「クロロゲン酸」と呼ぶときは、上記のグループをまとめた「クロロゲン酸類」を指していることがほとんどです。
- 総量として報告するのか、成分別に報告するのかを先に決めます。原料規格や届出資料の記載に合わせるのが原則です。
- 異性体は互いに変換します。焙煎や加熱で3-、4-、5-の比率が動くため、一成分だけを追うと全体の増減を見誤ります。
- コーヒー以外にも含まれます。ごぼう、なす、さつまいも、りんご、じゃがいもなどにも存在し、これらの褐変にも関わります。
焙煎で何が起きるか
クロロゲン酸は熱に弱く、焙煎の進行とともに減少します。同時に分解生成物が増えるため、風味の構成そのものが変わります。
| 段階 | クロロゲン酸類の傾向 | 測る意味 |
| 生豆 | 最も多く含まれる | 産地・品種の比較、受入時の基準値 |
| 浅煎り | 減少が始まるが多く残る | 機能性を訴求する製品の設計点 |
| 中煎り | 相当量が分解する | 風味と残存量の折り合い点を探る |
| 深煎り | 大きく減り、分解物が増える | 残存量の下限確認 |
| 抽出・乾燥後 | 工程条件により変わる | インスタント製品での最終値 |
減り方は焙煎機の方式、投入量、温度履歴によって変わります。他社の公表値をそのまま自社製品にあてはめず、自社の条件で測ることをお勧めします。豆の水分や粒度も抽出効率に影響するため、比較する試料は粉砕条件を揃えてください。
表示に使う前に確認すること
- 栄養成分表示の義務項目には含まれません。任意表示の成分にあたります(栄養成分表示のガイド)。
- 機能性表示食品として届け出る場合は、関与成分の分析方法を資料に記載する必要があります。総量として報告するのか成分別かも含めて、依頼時に確認してください。
- 賞味期限末での担保を考えます。製造直後の値だけで届け出ると、期限間際に下回るおそれがあります。保存試験との組み合わせが安全です。
- 制度の詳細は消費者庁の公表資料が一次情報です。
依頼のポイントと実務
| ポイント | 確認したいこと |
| 報告の単位 | クロロゲン酸類の総量か、成分別か |
| 検体の状態 | 生豆、焙煎豆、粉、抽出液、粉末のいずれか |
| 比較の設計 | 焙煎度合いを比べるなら、同じ回にまとめて測る |
| 併せて測る項目 | カフェイン、有機酸などを同時に測るか |
| 提出先 | 届出用か、取引先提出用か |
👥 こんな方からのご相談を承ります
- コーヒーの焙煎業、生豆の輸入商社の方
- インスタントコーヒー・コーヒー飲料の製造メーカーの方
- コーヒー由来の原料を扱う健康食品メーカーの方
- ごぼう茶・野菜加工品でポリフェノールを訴求されている方
- 機能性表示食品の届出資料を準備されている方
5ステップで進む分析の流れ
AHCの対応範囲
当社はISO/IEC 17025認定ラボ(PJLA L26-134)です。
クロロゲン酸は、カフェインや有機酸と同じ検体からまとめて測定できます。焙煎度合いの比較のように複数点を並べるご依頼では、同一条件でまとめて処理することで、比較に耐えるデータになります。費用は項目数と検体数により変わるため、個別にお見積りいたします。
なお、ここで述べた焙煎による挙動は一般的な傾向としての整理です。実際の検体では、焙煎機の方式や温度履歴、共存成分によって結果が変わることがあります。特殊な製法や配合の製品については、事前にご相談ください。
まとめ
クロロゲン酸は、焙煎という工程そのものと引き換えに減っていく成分です。したがって「どれだけ含まれているか」より「どこまで残す設計にするか」が問われます。浅煎りにすれば残りますが、狙った風味から離れます。この折り合いは、段階を振って測ることでしか決まりません。
もうひとつ注意したいのが、報告の単位です。総量なのか5-カフェオイルキナ酸なのかで数字が変わります。届出先や取引先の記載に合わせて先に決めておくと、あとの手戻りがありません。
カフェインとの同時測定を含め、設計のご相談はお問い合わせフォームまたはお電話(027-253-1515/平日8:30〜17:30)へお願いします。
外部参考資料
