食物繊維分析は、栄養成分表示で3つの公定法が併存する複雑な領域です。本記事では分析法の違いと食品ごとの選び方を整理します。
食物繊維分析は、食品表示と機能性訴求で重要な項目です。具体的には3つの公定法があります。さらに、分析法ごとに測定値が違います。
本記事では、プロスキー変法・酵素-HPLC法・AOAC2011.25法を整理します。食品種類による使い分けと、検査依頼のポイントも解説します。
よくお寄せいただくご相談
- 食物繊維の分析法を、どれにすべきか判断したい
- プロスキー変法とAOAC2011.25法の値の違いを理解したい
- 難消化性でん粉を含む食品の適切な分析法を相談したい
- 機能性表示食品の届出に使える分析法を確認したい
食物繊維分析の基本|3つの公定法
食品表示基準で認められた分析法
食物繊維分析には3つの公定法があります。具体的には次のとおりです。
- プロスキー変法(酵素-重量法 / AOAC985.29法)
- 酵素-HPLC法(AOAC2001.03法)
- AOAC2011.25法(令和4年に追加)
つまり、3つの分析法が併存します。なお、AOAC2011.25法は令和4年8月30日の通知で食品表示基準に追加されました。
定義法の2つのType
分析法はコーデックス委員会の定義で2つに分類されます。具体的にはTypeⅠとTypeⅡです。
TypeⅠは、難消化性でん粉や低分子量水溶性食物繊維も対象に含めます。一方、TypeⅡはそれらを含まない従来の定義です。AOAC2011.25法と酵素-HPLC法がTypeⅠ、プロスキー変法がTypeⅡです。
3つの分析法の比較
主要な3法を比較表で整理しました。食品特性によって選択します。
| 分析法 | 対象範囲 | 適用食品 |
|---|---|---|
| プロスキー変法 | 不溶性 + 水溶性食物繊維(高分子量) | 難消化性でん粉が少ない一般食品 |
| 酵素-HPLC法 | プロスキー変法 + 低分子量水溶性食物繊維 | オリゴ糖類を含む食品 |
| AOAC2011.25法 | 難消化性でん粉 + 低分子量水溶性食物繊維も全捕捉 | 穀類・いも・豆類・未熟バナナ等 |
出典:食品表示基準別添、消費者庁通知
プロスキー変法とAOAC2011.25法で値が違う
同じ食品でも、分析法で食物繊維量が変わります。具体的には次のような関係です。
AOAC2011.25法 ≥ プロスキー変法
つまり、AOAC2011.25法の方が値が大きく出ます。理由は2つの加算項目です。
- 低分子量水溶性食物繊維(オリゴ糖など)が加算される
- 難消化性でん粉(RS1, RS2)がすべて加算される
プロスキー変法の原理と特徴
酵素-重量法による測定
プロスキー変法は、酵素処理と重量測定を組み合わせた手法です。具体的には3ステップで進めます。まず耐熱性α-アミラーゼで澱粉を分解します。次にプロテアーゼでタンパク質を分解します。最後にアミログルコシダーゼで残った澱粉を分解します。
つまり、消化されない成分(食物繊維)だけが残ります。残渣を乾燥・秤量して食物繊維量を求めます。なお、灰分とタンパク質を差し引いて補正します。
プロスキー変法の留意点
沸騰水浴で酵素反応を行います。具体的には95〜100℃の高温です。そのため、難消化性でん粉(RS1, RS2)が分解されてしまいます。
たとえば未熟バナナや生の馬鈴薯に含まれる難消化性でん粉は、本来食物繊維として機能します。しかし、プロスキー変法では強制的に糊化・分解されるため定量できません。
AOAC2011.25法の原理と特徴
37℃での酵素反応が決定的な違い
AOAC2011.25法は、酵素反応温度が37℃です。具体的には生体内とほぼ同じ条件です。そのため、難消化性でん粉が分解されずに測定できます。
つまり、生体内で実際に消化されない成分を正確に評価できます。さらに、HPLCで低分子量水溶性食物繊維も同時に定量します。
分画と詳細表示
AOAC2011.25法では、食物繊維を複数の画分に分けて表示します。具体的には次の項目です。
- 不溶性食物繊維(難消化性でん粉を含む)
- 高分子量水溶性食物繊維
- 低分子量水溶性食物繊維
- 難消化性でん粉(不溶性食物繊維の内数)
- 食物繊維総量
つまり、機能性訴求や詳細表示に対応できる手法です。コーデックス食品委員会の定義にも整合します。
食品種類による分析法の選び方
食品ごとに適切な分析法が異なります。具体的な目安を次の表で整理しました。
| 食品カテゴリ | 推奨分析法 | 理由 |
|---|---|---|
| 穀類・小麦製品 | AOAC2011.25法 | 難消化性でん粉(RS1)が多い |
| いも・でん粉類 | AOAC2011.25法 | 難消化性でん粉(RS2)が多い |
| 豆類・未熟バナナ | AOAC2011.25法 | 難消化性でん粉が多い |
| 野菜・果物(熟成) | プロスキー変法 | 難消化性でん粉が少なく従来法で十分 |
| オリゴ糖配合食品 | 酵素-HPLC法またはAOAC2011.25法 | 低分子量水溶性食物繊維の捕捉が必要 |
| 難消化性デキストリン配合 | 酵素-HPLC法 | 低分子量水溶性食物繊維として測定 |
出典:日本食品分析センター「目的に応じた食物繊維分析法の選択」
熱量計算との関係
食物繊維のエネルギー換算係数
食物繊維量は熱量計算に直結します。具体的には素材別の係数を使います。詳細はAtwater係数による熱量計算でも整理しています。
つまり、寒天は0kcal/g、難消化性デキストリンは1kcal/g、グアーガムは2kcal/gです。原料素材に応じて係数を選びます。
分析法と係数の組み合わせに注意
分析法によって測定される食物繊維の範囲が異なります。そのため、係数選定も慎重に行います。具体的にはAOAC2011.25法で測定した値には、難消化性でん粉も含まれます。
たとえばプロスキー変法で測定した値に難消化性デキストリンの係数(1kcal/g)を機械的に適用するのは不適切です。原料配合と分析法の両方を確認する必要があります。
食物繊維分析の検査依頼で押さえておきたい4つのポイント
食物繊維分析の検査をご依頼いただく際、結果の精度を高めるためにお伝えいただきたい情報があります。
| No. | ご相談・ご共有いただきたい項目 | お伝えいただきたい情報 |
|---|---|---|
| 1 | 分析法のご希望 | プロスキー変法 / 酵素-HPLC法 / AOAC2011.25法 / おまかせ |
| 2 | 食品の種類と原料構成 | 穀類・いも類・豆類の含有、難消化性でん粉の有無 |
| 3 | 機能性関与成分の有無 | 難消化性デキストリン・イヌリン・オリゴ糖等の配合 |
| 4 | 用途・目的 | 栄養成分表示・機能性表示届出・社内品質管理 |
関連する栄養成分試験との組み合わせ
食物繊維分析は、他の栄養成分試験と組み合わせるケースが多くあります。具体的には栄養成分表示の義務5項目を一括でご依頼いただくのが一般的です。
さらに、Atwater係数による熱量計算では食物繊維の素材別係数を整理しています。タンパク質の分析方法・脂質の分析方法と組み合わせると、栄養設計が完結します。
AHCで対応している関連試験
AHCでご相談いただける食物繊維分析と関連試験を整理しました。
| 試験項目 | 対応可否 | 備考 |
|---|---|---|
| 食物繊維分析(プロスキー変法) | 要相談 | 食品種類に応じてご提案 |
| 食物繊維分析(酵素-HPLC法) | 対応 | 難消化性デキストリン配合食品向け |
| 食物繊維分析(AOAC2011.25法) | 要相談 | 穀類・豆類など難消化性でん粉が多い食品 |
| 栄養成分表示の義務5項目セット | 対応 | 熱量・タンパク質・脂質・炭水化物・食塩相当量 |
| 機能性関与成分の定量 | 対応 | 難消化性デキストリン・β-グルカン等 |
※具体的な対応可否は個別にお問い合わせください。
こんな方からのご相談を承っています
食物繊維分析は、以下のような方々からのご相談実績があります。
- 加工食品メーカーで栄養成分表示の作成を進めている方
- 「食物繊維豊富」「食物繊維入り」強調表示をご検討の方
- 機能性表示食品の届出をご検討の方(難消化性デキストリン等)
- 穀類・いも類・豆類製品で正確な食物繊維量を求める方
- オリゴ糖配合の健康食品メーカーで詳細な分析が必要な方
ご相談から納品までの流れ
- お問い合わせ:まず、フォームまたはお電話でご相談
- 試験設計のご提案:次に、製品特性・用途をお伺い
- お見積もり:そのうえで、検査項目・サンプル数・納期を提示
- 検体送付:さらに、送付方法と必要量をご案内
- 試験実施・結果報告:そして、成績書を発行
AHCについて
AHCは1977年創業の食品検査ラボです。食物繊維分析を含む栄養成分試験を、製品特性に応じてご提案しています。3つの公定法から最適な手法を選定します。
具体的な検査項目・サンプル数・納期は個別見積りにてご相談ください。機能性表示食品の届出根拠試験など、表示計画の段階からのご相談を歓迎します。
関連記事:栄養成分表示の義務5項目 ・ Atwater係数による熱量計算 ・ タンパク質の分析方法 ・ 脂質の分析方法
お問い合わせ:お問い合わせフォーム
お電話:027-253-1515(平日 8:30〜17:30)
まとめ|食物繊維分析の3つの公定法を使い分ける
食物繊維分析には3つの公定法があります。具体的にはプロスキー変法・酵素-HPLC法・AOAC2011.25法です。それぞれ対象範囲が異なります。
つまり、食品種類で最適な分析法が変わります。難消化性でん粉が多い食品はAOAC2011.25法が望ましいです。オリゴ糖を含む食品は酵素-HPLC法も選択肢です。
分析法の選定でご不明な点があれば、AHCまでお気軽にご相談ください。
外部参考資料
・消費者庁「食品表示基準別添 栄養成分等の分析方法等」
・文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
・日本食品分析センター「目的に応じた食物繊維分析法の選択」
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