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耐熱性好酸性菌 検査|TABと果実飲料の異臭変敗

📋 こんなご相談をよくいただきます

  • 果汁飲料から、消毒剤のような薬品臭がすると言われた。
  • 容器は正常なのに、内容物が白く濁っている。
  • 一般生菌数は陰性なのに、味と香りだけおかしい。
  • 殺菌条件は満たしているのに、原因が分からない。
  • 原料の果汁か、工程か、どちらから入ったか特定したい。

耐熱性好酸性菌検査は、果実飲料や酸性飲料の変敗原因を突き止める試験です。この菌による変敗には、特徴があります。まず、容器が膨らみません。次に、内容物の色もほとんど変わりません。それでいて、強い薬品臭が生じます。つまり、外から見ても分からないまま品質が損なわれます。しかも通常の殺菌では死滅しないため、加熱条件を満たしていても発生します。本記事では、その仕組みと検査方法を解説します。

耐熱性好酸性菌(TAB)とは

耐熱性好酸性菌は、酸性かつ高温の条件を好む有芽胞菌です。英語ではThermo-Acidophilic Bacilliと呼びます。この頭文字から、TABと略されます。代表的なのはAlicyclobacillus属です。なかでもA. acidoterrestrisがよく知られています。

特徴を整理すると、次のようになります。

項目 性質
増殖pH pH2〜6の酸性域。中性域では増殖できない
増殖温度 高温性。培養は45℃前後で行う
酸素要求性 好気性。酸素がないと増殖しない
芽胞 形成する。加熱に強い
病原性 ヒトに対する病原性は報告されていない

この菌は土壌に由来します。そのため、収穫した果実に付着してきます。しかも洗浄工程を経ても、完全には取り除けません。したがって、原料から持ち込まれることを前提に管理する必要があります。

問題が広く知られたのは、1982年のことです。当時の西ドイツで、りんご透明果汁の異臭変敗事故が起きました。それまで、酸性食品は90℃以上の加熱で十分と考えられていました。しかし原因は、酸性下で増殖する芽胞菌だったのです。

なぜ通常の殺菌で生き残るのか

理由は芽胞の耐熱性にあります。芽胞は熱に強い耐久型の細胞なので、加熱してもすぐには死にません。

数値で見ると分かりやすくなります。A. acidoterrestrisの芽胞では、90℃でのD値が10〜20分と報告されています。95℃でも1〜5分です。D値とは、その温度で菌数を10分の1に減らすのに要する時間です。つまり95℃でも、数分の加熱では1桁しか減りません。

一方、果汁飲料の一般的な殺菌は、90℃台で数十秒という条件です。これでは芽胞を失活させられません。したがって、殺菌条件を守っていても生残します。

⚠️ 加熱を強めれば解決、とはいきません

芽胞を確実に失活させる条件まで加熱すると、果汁の風味や色調が損なわれます。つまり、品質と殺菌のどちらかを犠牲にする関係になります。したがって、原料段階での菌数管理と工程の見直しが現実的な対策になります。

なお、耐熱性は菌株によっても異なります。国内の研究では、5株のうち4株が95℃で1.3〜2.2分でした。しかし1株だけは20.1分と、約10倍の耐熱性を示しました。つまり、平均値だけで設計すると危険が残ります。

グアイアコールという異臭

この菌による変敗で最も目立つのが、異臭です。原因物質はグアイアコールです。消毒剤や薬品を思わせる強い臭いを持ちます。グアヤコールと表記されることもあります。なお、2,6-ジブロモフェノールが関与する場合もあります。

生成の経路は解明されています。果実に含まれるフェルラ酸が、まずバニリンに変わります。次に、菌の酵素によってグアイアコールへ変換されます。この反応を起こすのは、A. acidoterrestris、A. acidiphilus、A. herbariusなどです。

フェルラ酸 → バニリン → グアイアコール(薬品臭)

ただし、すべての菌種が産生するわけではありません。したがって、菌が検出されたからといって、直ちに異臭が出るとは限りません。逆に言えば、産生能の確認まで行う意味があります。

変敗の報告は、りんご以外にも広がっています。オレンジ、なし、もも、マンゴー、白ぶどうの果汁、さらにトマト製品でも起きています。つまり、酸性の飲料や加工品なら幅広く対象になります。

異臭成分そのものの同定については、GC/MS/MSによる異臭分析で解説しています。微生物側と化学側の両面から追うと、原因の特定が早くなります。

日本果汁協会の統一検査法

検査は、日本果汁協会が定めた統一検査法に沿って行います。この方法は、業界で広く用いられています。ポイントは、検体の性状によって手順が分かれることです。

検体 方法 結果の形
ろ過できる メンブランフィルター法 菌数として定量できる
ろ過できない 増菌培養法 陰性・陽性の定性判定

透明な果汁ならフィルターを通せるので、定量できます。一方、果肉入りやピューレ状の製品は目詰まりします。そのため、増菌してから有無を判定します。この場合、元の菌数は分かりません。したがって、目的に応じて検体を選ぶことが大切です。

検査の流れ

STEP 1
検体を加温し芽胞を選ぶ
STEP 2
ろ過または増菌
STEP 3
YSG培地で45℃培養
STEP 4
集落を計数・確認
STEP 5
グアイアコール産生能を鑑別

最初の加温には意味があります。あらかじめ70℃程度で加熱することで、芽胞以外の菌を減らせるためです。そのうえで45℃という高い温度で培養します。この条件だからこそ、目的の菌だけが選択的に発育します。

最後の鑑別では、分離した菌がグアイアコールを産生するかを確かめます。ここまで行うと、異臭リスクの有無まで判断できます。

フラットサワーとの違い

似た現象に、缶詰やレトルト食品のフラットサワーがあります。どちらも容器が膨らまないため、混同されがちです。しかし、対象も検査条件も異なります。

比較 耐熱性好酸性菌 フラットサワー
主な対象 果実飲料・酸性飲料 缶詰・レトルトなど容器詰食品
pH帯 酸性域を好む 低酸性から中性寄りの製品
主な症状 薬品臭・混濁 酸味の増加・pHの低下
培養温度 45℃前後 55℃前後
検査法 日本果汁協会 統一検査法 恒温試験+高温細菌数

したがって、製品のpHが判断の起点になります。酸性飲料なら本記事の検査、低酸性の容器詰なら別の設計です。詳しくはフラットサワー検査の解説をご覧ください。

管理のポイント

殺菌の強化に頼れない以上、上流で抑える発想が要ります。

対策 狙い
原料果汁の菌数を確認する 濃縮果汁や輸入原料は持ち込み源になりやすい
果実の洗浄工程を見直す 土壌由来の付着を減らす
保管温度を下げる 夏場の高温保管は増殖域に入りやすい
加温販売品は個別に評価する 保温状態が続くと条件が変わる
設備の洗浄を徹底する 配管や充填機に残った芽胞が汚染源になる

なお、この菌は衛生指標菌には含まれません。つまり、法令で検査が義務づけられているわけではないのです。それでも飲料メーカーが管理するのは、品質クレームに直結するためです。清涼飲料水の法定項目については清涼飲料水の検査で解説しています。

耐熱性好酸性菌検査の依頼と実務

依頼前に整理しておくと、設計が早く決まります。

確認事項 なぜ必要か
検体の性状 ろ過の可否で定量か定性かが決まるため
製品のpH 増殖しうる菌の見当をつけるため
検査の目的 原因究明か日常管理かで検体量が変わるため
異常品と正常品 比較しないと判断できないため
原料の産地・構成 持ち込み源を絞り込むため

検体量は目的によって変わります。おおむね10〜100gの範囲でご相談ください。

AHCの対応範囲

項目 対応
TAB定量(メンブランフィルター法) ✅ 承ります
TAB定性(増菌培養法) ✅ 承ります
グアイアコール産生能の鑑別 ✅ 承ります
恒温試験・高温細菌数 ✅ 承ります
一般生菌数・大腸菌群・黄色ブドウ球菌 ✅ ISO/IEC 17025認定範囲

耐熱性好酸性菌の検査は項目数と検体数により変わるため、個別にお見積りいたします。

🏢 株式会社AHCについて

1977年創業の食品微生物検査ラボとして、微生物検査と成分分析を全国対応で承っています。群馬県前橋市に試験室を構えています。関連記事:果汁の糖分析 / 食品クレームの異臭対応

まとめ

耐熱性好酸性菌は、酸性で高温を好む有芽胞菌です。だからこそ、果実飲料の通常の殺菌を生き延びます。

変敗しても容器は膨らみません。色もほとんど変わりません。表に出るのは、グアイアコールによる薬品臭と混濁です。つまり、開けて嗅ぐまで気づけない性質があります。

検査は日本果汁協会の統一検査法で行います。ろ過できる検体なら定量、できない検体なら定性です。さらに鑑別まで進めば、異臭リスクの有無まで確認できます。

対策の要は、殺菌の強化ではありません。原料の菌数管理と保管温度、そして設備の洗浄です。

当社では統一検査法に基づく検査を承っています。ご相談はお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。お電話(027-253-1515)でも承ります。

外部参考資料

耐熱性好酸性菌検査(果実飲料の混濁とメンブランフィルター法)

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