📋 こんなご相談をよくいただきます
- 検食を採ってはいるが、やり方が合っているか不安。
- 泥付きの野菜は洗ってから採るのか迷う。
- 乾物も50g必要なのか。実際の使用量が足りなくなる。
- 保健所から検食の提出を求められた。
- うちは小規模だが、採らなくてもよいのか。
検食は、食中毒が起きたときに原因を突き止めるための備えです。原材料と調理済み食品を保存しておき、必要になったら検査に回します。いわば証拠の保全です。ただし、この言葉には別の意味もあります。混同したまま運用している施設が少なくありません。本記事では、そこから整理します。
「検食」2つの意味
同じ漢字ですが、まったく別の行為を指します。
| 区分 | 何をするか | 根拠 |
| 試食としての検食 | 責任者が配膳前に食べて安全を確認する | 学校給食衛生管理基準など |
| 保存食としての検食 | 50gずつ採って冷凍保存する | 大量調理施設衛生管理マニュアル |
本記事で扱うのは後者です。マニュアルには「検食の保存」と書かれていますが、内容は保存食のことを指します。前者は食べてしまう行為、後者は残しておく行為です。目的が正反対なので、記録も別に取ってください。
保存のルール
マニュアルの規定は明確です。数値を押さえておけば迷いません。
| 項目 | 規定 |
| 対象 | 原材料および調理済み食品を食品ごとに |
| 量 | 50g程度ずつ |
| 容器 | 清潔な容器(ビニール袋等)に入れて密封 |
| 温度 | マイナス20℃以下 |
| 期間 | 2週間以上 |
| 原材料の状態 | 洗浄・殺菌等を行わず、購入した状態で |
| 調理済み食品の状態 | 配膳後の状態で |
とくに大事なのが最後の2行です。原材料は洗わずに、買ったままの状態で採ります。洗ってしまうと、納入時点の汚染状況が分からなくなるためです。調理済み食品は、実際に提供したのと同じ状態で残します。
採り方でつまずきやすい点
現場では判断に迷う場面が出てきます。よくあるものを挙げます。
- 泥付きの野菜…洗わずに採ります。ただし皮やへたではなく、可食部を50gです。
- 卵…洗浄や殺菌の前に、殻付きのまま1個を採ります。
- 乾物…ごまや乾燥わかめも50gが原則です。ただし1袋分に相当することもあります。
- 調味料…使用したものについて、開封済みの状態で採ります。
乾物は現実的な問題を招きます。50g採ると使う分がなくなる場合があるためです。そうしたときは、管轄の保健所にご相談ください。施設の実情に応じた指示が得られることがあります。
記録の書き方
袋には日付と食事の区分を書きます。「〇月〇日 朝食」のような形です。これがないと、後から取り出せません。2週間分がまとまると相当な数になります。そのため取り出せる状態かどうかが実質的な要件です。
⚠️ 採っていても使えないことがあります
よくあるのが、日付だけで献立が分からない、袋が破れて他の食品と接触している、冷凍庫の温度が上がっていた、という状態です。これでは検査に出しても意味のある結果が得られません。保存すること自体が目的ではなく、使える形で残すことが目的です。
対象となる施設
マニュアルが適用されるのは、規模の大きい調理施設です。同一メニューを1回300食以上、または1日750食以上が目安になります。学校、病院、介護施設のほか、規模の大きい社員食堂やホテルも含まれます。
ただし、これに満たない施設でも実施する意味はあります。食中毒が起きたときに原因を示せるかどうかは、規模と関係ないためです。むしろ小規模施設のほうが不利です。疑いをかけられたとき、反証する手段を持ちにくいためです。
なお、検食はHACCPの管理項目には含まれていません。HACCPは危害要因を工程で抑える仕組みだからです。つまり発生を防ぐのがHACCP、原因を追うのが検食という役割分担です。両方が必要です。
食中毒が起きたときの使われ方
実際に事故が起きると、検食は次のように使われます。
原材料と調理済み食品の両方を採る理由が、ここにあります。原材料から菌が出て調理済みからは出なければ、加熱工程は機能していたことになります。逆に、原材料が陰性で調理済みが陽性なら、調理後の汚染や増殖を疑います。つまり、比較して初めて意味を持つデータです。
症状から推定される菌の例は次のとおりです。
| 状況 | 想定される菌 |
| 大量調理したカレー・煮込み | ウェルシュ菌 |
| 鶏肉料理、加熱不足 | カンピロバクター |
| 卵・食肉の加工品 | サルモネラ |
| 米飯・めん類の放置 | セレウス菌 |
| そのまま食べる加工品 | リステリア |
検食 保存食の検査依頼と実務
検食を検査に出すときは、通常の依頼とは進め方が変わります。急を要するうえ、行政のやりとりと並行するためです。
| 確認事項 | なぜ必要か |
| 発症の状況 | 潜伏期間と症状から菌を絞れるため |
| 該当する日付と食事 | どの検食を出すかを決めるため |
| 保健所とのやりとり | 行政検査と重複しない設計にするため |
| 献立と工程の記録 | 原材料と調理済みを対応づけるため |
| 輸送方法 | 凍結を保ったまま届ける必要があるため |
輸送には注意が必要です。途中で解凍されると、菌数が変わってしまいます。 冷凍便を手配し、到着日時をご相談ください。
AHCの対応範囲
| 項目 | 対応 |
| 一般生菌数・大腸菌群・黄色ブドウ球菌 | ✅ ISO/IEC 17025認定範囲 |
| サルモネラ・カンピロバクター | ✅ 承ります |
| ウェルシュ菌・セレウス菌 | ✅ 承ります |
| リステリア・腸炎ビブリオ | ✅ 承ります |
| 拭き取り検査・手指の細菌検査 | ✅ 承ります。原因究明の補強に |
| ウイルス検査 | ⚠️ 要相談 |
当社はISO/IEC 17025認定ラボ(PJLA L26-134)です。費用は項目数と検体数により変わるため、個別にお見積りいたします。
検食だけでは経路が絞りきれない場合もあります。そのときは拭き取り検査や手指の細菌検査を組み合わせると、汚染源の推定が進みます。
🏢 株式会社AHCについて
1977年創業の食品微生物検査ラボとして、微生物検査と成分分析を全国対応で承っています。群馬県前橋市に試験室を構えています。関連記事:カレーとウェルシュ菌 / 一般生菌数の検査
まとめ
検食には2つの意味があります。本記事で扱ったのは、保存食としての検食です。配膳前に試食する検食とは目的が違います。
保存の条件は、50g程度ずつ密封し、マイナス20℃以下で2週間以上です。原材料は洗わずに買ったままの状態で、調理済み食品は配膳後の状態で採ります。
大切なのは、使える形で残すことです。日付と献立が分かり、袋が破れておらず、温度が保たれていること。この3つが揃って初めて、検査で意味のある結果が出せます。
当社では検食の微生物検査を承っています。ご相談はお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。お電話(027-253-1515)でも承ります。
外部参考資料
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